アングルファインダーA2/B
一眼レフカメラの歴史は古く、世界最初の一眼レフの登場は実に1800年代中頃までさかのぼるが、1950年代になるまで一般には普及しなかった。それは構造上改善しなければならない問題があったからである。1950年代前半の一眼レフはシャッターを切るとミラーが上がってそのままという仕様であった。フィルムを巻き上げるまでファインダーは真っ暗なまま。それを解決したのがクイックリターンミラーで旭光学のアサヒフレックスIIBがこれを実用化した(まあ、この辺りには諸説あるのだが)。しかしアサヒフレックスはまだウエストレベルファインダーだった。二眼レフのように上から覗くファインダーであり、これでは一般用途では、かなり不便である。そこで開発されたのがペンタプリズムだ。実はクイックリターンミラーよりペンタプリズムの方が先に実用化されていたのだが(一応コンタックスS)、結局その両方を組み込み、されに自動絞りが加わって現在の一眼レフの基礎が作られた。
いまさら、という感じの前置きであったが、アングルファインダーはこの一眼レフの進歩に逆行するアクセサリーである。わざわざみんなが苦労して作ったペンタプリズム式のアイレベルファインダーにこのアングルファインダーを付けると、カメラの上方からファインダーを覗けるようになる。一眼レフはペンタプリズムをはずせば、アサヒフレックス時代に戻ってアイレベルファインダーになるのだが、Aシリーズはペンタプリズムの交換取り外しが出来ないから、一部のユーザーにはこのようなアクセサリーが必要になるらしい。アングルファインダーBにはプリズムが入っていて、左右正像(左右が逆になっていない)に補正されているが。その分高価である。アングルファインダーの方は、左右逆像で、安価に仕上げてある。
さて、このアクセサリーはどのような場合に便利なだろうか?アイレベルファインダーで覗きにくく、上からなら見やすいシーンというと、極端なローアングルだろうか。ここでいかがわしい写真を想像して方は私と同じ種類の人間である。安心していただきたい。しかし、アングルファインダーはそんなにアイポイントが大きくないので、結局ファインダーに目を近づけなければならないという難点がある。いかにアングルファインダーといっても地面に這いつくばって、ローアングルから覗いていたら、怪しい以外の何者でもない。やはりこれは高山植物などの接写が最も無難な用途ではなかろうか?アイレベルではないから、速写性は望めない。三脚を使ってじっくりピントを合わせて撮るというのが正しい使い道だと納得して使おう。
私は持っていないので想像の域を出ないが、スナップには使えないものだろうか?一般にアイレベルでカメラを構えられると「いかにも撮られている」という感じになるが、アングルファインダーを使って上から覗いていれば、あまり写真を撮られている感じはしないかもしれない。まあ、私程度のユーザーには猫に小判のようなので、おそらく相当安い値段で出ていない限りは買うことはないだろう。