パワーワインダーA
キヤノンAE−1と同時発売のワインダー。キヤノンにとってはこのクラスのカメラのアクセサリーにワインダーを加えるのは初めてである。AE−1のコマーシャルコピーが「連写一眼」であったことを考えても、このワインダーはAシリーズのキーになるアクセサリーであることは間違いない。デザイン的にもAシリーズの八角形のボディによく馴染む。スイッチはONとOFFしかないため、ひとコマ撮りか連写かはシャッターを押す指先の操作でコントロールしなければならない。慣れれば何ということはないが、初めのうちは思わずふたコマ進んでしまうかもしれない。単三電池4本で、カタログ上は36枚撮り20本以上の撮影が可能と言うことになっている。この数値は信頼できる。
キャノンにとって、ワインダーやモータードライブといったアクセサリーをつけるのはAシリーズとNewF−1が最後になった。Tシリーズは自動巻き上げが最初から内蔵されているし、EOSになってからは自動巻き上げが当たり前になってしまった。考えてみればフィルムの巻き上げというのは露出やピントと違い個人の好みがでにくい部分なのだから(ようはただ巻き上げるだけ)もっと早く自動化されてもよかった分野だと思う。ただ、露出と違ってそんなに難しいものでもないので、自動化の要求はさほど強くなかったのかもしれない。ただ、「分割巻き上げ3回が自分のリズムである」と言う人もいるので、巻き上げといってのばかにはできない。
私もA−1を使用していた高校時代は、先立つものがなくワインダーまでは手が回らなかった。望遠、広角のレンズは何としても手に入れたいと思ったのだが、「巻き上げは手でやればいい」ということで予算がつかなかったのだ。結局大学2年生のときにワインダーA2を買うまでは手動巻き上げでとおすことになってしまった。ただ、このワインダーというのは一回手にすると二度と離せなくなるアクセサリーだと思う。ワインダー無しのカメラを使っているときでも思わず巻き上げてくれるのを待ってしまう。特に立て続けにシャッターを切る場合はもう身体にワインダーのリズムが染み付いているのでどうしようもない。人間は楽な方に流れてゆくものであると実感する。
キヤノンのAシリーズ用のワインダーはAもA2もグリップのない、カメラボディーのレリーズボタンを使用してシャッターを切るタイプである。ただF−1のワインダーはグリップ付きなのでキヤノンのポリシーというわけではなさそうだ。コストダウンと言う面から考えると当然グリップ無しの方がいいような気がする。ワインダーAはすべてのAシリーズに共通で、操作も同じ。巻き上げ速度は秒間2コマ。巻き上げの感触がいまいちのAシリーズ(特にA−1)には必需品ともいえるアクセサリーであろう。