アメリカンカメラの特徴
アメリカンカメラといってもいろいろなカメラがあるわけで、それをひとくくりにすること自体かなり無理があるのだが、それでもあえて総括すると以下のような特徴が見られると思う。あくまで私の拙い経験プラス主観の範囲である。
1.チープな外観
これは仕方が無い。だって実際に安いのである。「ライカ1台家1軒」の時代にアーガス75は$14.89だったのである。いくら今とは物価が違うとは言え、$14.89で家は買えない。安くするために材質にもこだわっており、金属カメラが当たり前の時代にベークライトを多用したカメラもある。ボックスカメラなどはほとんどがベークライトかプラスチックである。ドイツや日本のカメラは木製に始まり、長い金属の時代を経て最終的に工業用プラスチックの時代を迎えている。しかしアメリカの場合は木製からいきなりベークライトやプラスチックになっている気がする。もちろん全金属製のカメラも存在することはするのだが。
2.構造が簡単
チープなカメラを作るために、構造は簡単になっている。同時期のヨーロッパ製のカメラと比べるとほほえましくなっていまう。自動化するとお金がかかりそうな部分は人間がマニュアルで行わなければならない。「自動化するとお金がかかりそうな部分」と言っても決してAEとかAFではない。そんな高尚な話ではない。たとえば、
(1)フィルムカウンター:アメリカのカメラの多くは自動復元ではない。
(2)セルフコッキング:1950年代になってもフィルムを巻き上げてからマニュアルでシャッターをチャージしなければならないカメラがあった。しかもメジャーブランドで。
3.シャッター速度がさびしい
これもチープなカメラを作るためかもしれないが、日本製やドイツ製のレンジファインダー機が1/1000を達成していた時期に、だいたい1/300秒で妥協していた。普及機ではない、一応レンズ交換も可能なレンジファインダーカメラでである。
4.使うのに力が要る、使っていると痛くなる。
なぜか巻き上げやレバーの操作がスムーズでない。そもそも「滑らかな操作性」と言う概念が根本から欠落しているのだろう。力が要ることに付随しているのだが、使っていると手が痛くなる。
5.重くて物理的に頑丈
これはカメラに限ったことではない。アメリカ人の好みを如実にあらわしている。アーガスC44は落としたって絶対壊れそうにない。しかも重い。わが国の技術者は伝統的に軽くて高性能なものを作ろうと努力する。たとえば古い話だが海軍零式戦闘機。それに比べてアメリカ人は重いものを作って力でカバーする。たとえばグラマンF6Fヘルキャット。もう少し卑近な例をあげよう。イチローとマルティネス。しかし重いカメラだからと言って性能が良いとは限らない。これもイチロー・マルティネスと同じである。物理的に頑丈だからと言って、故障率が低いわけではない。これもイチロー・マルティネスと同じである。
6.使いにくい
多くのアメリカンカメラは人間工学を無視している。どうしてここにこのスイッチがあるのか?どうしてここにレンジファインダーの窓があるのか?と言うことが頻繁にある。そしてスイッチが重いのだからいやになってしまう。
7.良く写る
これは本当に不思議だ。
どうだろう。いくつかアメリカンカメラの特徴を挙げてみたが、多くの項目はカメラだけではなくアメリカ製品全般に通ずることに気づいていただけただろうか?最近はアメ車のジャパナイズドされてきたが、もともとのアメリカンアメ車はでかくて重くて燃費が悪くてよく壊れた。そう、それがアメリカなのである。アメリカ人なのである。工業製品はその国の国民性まで表すものなのである。
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