キヤノンAV−1

    

AE−1、A−1と続いたラインからちょっと外れる感じがあるのがこのAV−1です。何と言ってもこのカメラは絞り優先AE機なのです。キャノネットでさえシャッター速度優先だったキヤノンとしては初めての試みでしょう。でもどうしてこの時期に絞り優先機を出したのでしょう。市場の要求と言うのが一般的な模範解答ですね。キヤノンのホームページのカメラミュージアムにも海外市場からの要求と言う風に書いてあります。ただこのカメラミュージアムのAV−1のところを読むと本当に「絞り優先なんか本当は作りたくなかったのに、仕方なく作らさせられた」と言う感じがひしひしと伝わってきます。AV−1の説明なのに「いかにシャッター速度優先が優れていてキヤノンがそれにこだわっていたか、AV−1の製造が自分達にとってどれほど不本意だったか」を4/5にわたって切々と書いているのです。そして残り1/5がレンズの説明。私がAV−1なら思いっきり気を悪くしますね。これじゃあいくらなんでもかわいそうです。でも、それじゃあAV−1を積極的に使うか?と聞かれると、うーーん、あんまり出番がないですね。私も成り行き上1台は持っているんですが、他のAシリーズのカメラと比べて登板回数は明らかに少ないですね。やはり他のAシリーズ、と言うかAE−1、A−1、AE−1Pとは若干雰囲気が違うのでしょう。

    

ところで私、前から疑問に思っていたのですがAV−1だけ電池室の扉の構造が違いますね。AL−1は電池自体も違いますから置いておくとして、AE−1、A−1と続いた電池室の蓋を変更したのに、またAE−1Pで元に戻しているんです。これってどういう意図だったのでしょう?「AV−1はAシリーズにはあらず」と言う気持ちがあったからでしょうか?ただ、変更した扉に何か問題があるかというとそうでもないんですよね。この辺はちょっと謎です。さらにもう一つ、余所で話題になったこともあるのですが、Aシリーズの中でAV−1だけちょっとシャッターの音が違うんです。比べてみなければ分からない程度なのですが、AV−1のシャッターはかすかに甲高い金属音が入ります。得意のシャッター鳴きとは明らかに違います。音が安っぽいと言うと語弊があるかもしれませんが、ちょっと違うのです。これもAE−1Pになると元に戻りますから、不思議です。このあたりの経緯をご存知の方がいらしたらぜひとも教えていただきたいです。

    

AV−1が発売されたのは1979年です。今でもそうかもしれませんが、その昔カメラメーカーにとってアメリカは最も大切な市場でした。AE−1が爆発的に売れたのも結局は北米市場に受け入れられたからです。1960年代は日本のメーカーのカメラが北米では別ブランドで売られていました。アサヒペンタックスのSシリーズはハネウェルのブランド名を冠して売られていましたし、トプコンはベセラーでした。キヤノンのダイヤル35は北米ではベル・ハウエルのカメラになっています。キヤノンの名前はありません。しかし日本のカメラメーカーが力をつけるにつれ、しだいに自社ブランドで勝負するようになりました。1970年代後半から80年代にかけてはカメラの分野においては日米の力が完全に逆転する時期でしょう。もちろん今でも北米市場向けのカメラはありますし、ものは同じでも名前を変えている例はたくさんあります。アメリカでは価格競争が厳しいので、出来るだけ機能を削ぎ落とし、安くする傾向にあります。例えばパノラマ機能などが削ぎ落としの対象になります。ただ、AV−1のように企業のポリシーに反するカメラを嫌々作ることはもうないのではないかと思います。キヤノンはEOSになってからEF−Mなんていうカメラを出しましたが、あれはどうなんでしょうね?

AV−1のデザインはAE−1に似ています。細かい違いはもちろん多々ありますが「顔」はAE−1だと思います。使い方も簡単で、シャッターダイヤルはなくダイヤルをA(絞り優先)かストロボかセルフタイマーに合わせ、あとはレンズの絞りを合わせるだけです。ファインダー内にはシャッター速度だけがメーターで表示されます。その他の逆光補正などもAE−1と同じです。もちろんワインダーも装着可能です。



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