コニカ ビッグミニ
コニカとミノルタが統合され、カメラのブランドはミノルタになる。つまり間もなくコニカブランドのカメラは、新品カメラ市場からは姿を消すことになる。私がカメラに興味を持ち始めたころ、コニカは「愛情コニカ」Acom−1しかラインナップしておらず、カメラメーカーとしてはいささかさびしい存在だった。その後FS−1シリーズで人気を呼ぶが一眼レフがオートフォーカスへの道を進むのと前後して、一眼レフ市場からは撤退してしまった。私には分からないが、往年のカメラファンにとってはヘキサノンの信仰があるらしい。その信仰ゆえに名機ヘキサーが誕生し結果的にコニカの最後を彩った。
私にとってコニカはフィルムメーカーと言う印象が強かったのだが、日本におけるカメラの歴史をひも解いて、コニカの偉大さを知った次第である。コニカの前身である「小西六兵衛商店」と「浅沼商会」なくして今の日本のカメラ産業はなかったっかも知れない。ともかく、明治・大正時代は「小西六兵衛」と「浅沼」の独壇場であった。欧米諸国から写真機や感光材料、薬品を輸入し日本における写真の普及に努め、そして自らカメラを作りカメラ産業の基礎を作ったのがコニカであった。まだ、キヤノンが存在すらしなかった時代である。
戦後もコニカはカメラメーカーでありつづけ、世界初のAE一眼レフ(コニカFTA)や世界初の自動焦点カメラ(ジャスピンコニカ)を世に送り出した。コンパクトカメラのストロボ内蔵をあたりまえにしたのもコニカであった。
私の手元に何台かのコニカ製カメラがある。残念なことに一眼レフはない。その中で、割と気に入っているのが、ビッグミニである。このカメラの特徴はなんと言っても小さいことである。私の手元にあるにはいわゆる初代であり、発売は1989年。この時代はコンパクトカメラのズームレンズがつき始め、カメラ自体が肥大していった時期であった。その中にあってビッグミニの小ささは際立っていた。そして小さいだけでなく、写りもよかったのである。レンズは35mmf3.5、無理にズームにしないことで、写りの良さとコンパクトさを両立できたのだろう。しかし、コンパクトと言ってもレンズの構成は4群4枚だから侮れない。一眼レフもそうだが、カメラと言うのは機能が増えて巨大化し、巨大化しきったところでコンパクトなものが登場し、またいっせいにコンパクト路線に移る。レンズ固定のビューファインダー(もしくはレンジファインダー)式のカメラの場合は、オリンパスペンがハーフサイズ化によって小型化を促し、ローライ35が35mmフルサイズの小型軽量化に先鞭をつけ、オリンパスXAが薄型バリア式の道を開いた。その後ズーム化によって大型化したコンパクトカメラをコンパクトに戻したのがビッグミニである。もっともその後のコンパクトカメラがビッグミニに続いたかと言うと必ずしもそうではなく、ズームを繰り出し式にして小型化したり、小型化にこだわらずに高級化したり、APS、デジカメとまさに多様化の道を歩んでしまった。
いま、ビッグミニの価値を求めるなら、35mmフィルムを使用したミニカメラで十分な写りを約束してくれるカメラであることだろう。APSならもっと小さいカメラがある。しかし、いまさらAPSに手を染めたくはない。ズームがないのは不便なような気もするが、しかし実はそれほど問題にならないということも、ビッグミニを使ってよくわかった。望遠が必要なときはそれなりの装備で撮影に行くのだ。ビッグミニが登場するのは、荷物を増やしたくないが、カメラは持っていきたいときである。そして実際そういう場面はよくある。そんなときはやはりビッグミニなのである。
コニカは90年代後半にヘキサーを出し、人気を博した。コニカがミノルタとなった後、どのようなカメラが世に出るのだろう。案外、コンパクトカメラの方はデジタルに特化してゆくかもしれない。最近、どこに行ってもコンパクトカメラはデジタルである。それも携帯電話に吸収されるかもしれない。もう、ビッグミニのようなカメラが登場しないのなら、今使っているのを大切にしなければならない。