名機である。OM−2が名機であることに異論を唱える人はいまい。名機度としてはメカニカルである分OM−1の方が上かもしれないが、やはりOM−2はいいカメラだ。私が初めて一眼レフを買った中学3年生の時、最後まで候補に残ったのがA−1とOM−2だった。OM−2はA−1よりは地味な性能である。絞り優先AE+マニュアルというスペックは当時でも、ごく一般的な中級機であった。しかし、1980年の時点でTTLダイレクト測光を達成していたのはOM−2だけであった。TTLダイレクト測光はえらい。TTLダイレクト測光で専用ストロボを使えばストロボの光までボディでコントロールできるようになる。ストロボを使った接写だってオートで可能だ。マクロが充実していたオリンパスにとってTTLダイレクト測光のOM−2はまさにうってつけの存在だった。私にとってOM−2対A−1は、ダイレクト測光VSマルチモードAEの戦いであった。葛藤の末、マルチモードAEが勝った。この選択は妥当であったと思う。マルチモードAEは、私の人生を変えた。OM−2のTTLダイレクト測光はたしかに見事な方式であったが、カタログが強調するほど優位性があったわけではない。「今の光を捕らえる」と言っても、シャッターを切ってから光線の状態が急に変わることはめったにない。ストロボさえ使わなければ、それほど大きなアドバンテージがあるわけではない。ストロボを使った場合はさすがに一日の長がある。T90のA−TTLほど進化したものではないが、レンズの絞りがすべて使用できる、接写にめっぽう強いと言ったメリットがあった。おもしろいのは、選んだ絞りでシャッター速度が1/60秒より早くなるときはストロボが発光しない、「安全機構」がついている点である。ただ、私は割とストロボ撮影を好む方だが、A−1の外光オートで不自由を感じることはほとんどなかったというのも事実である。
OM−2にはマイナーチェンジバージョンのOM―2Nがある。私を悩ませたのは、OM−2Nの方だった。ホットシューが付属品になった位しか違いを感じないのだが、内部的にはかなり変化があったという噂もある。OM−2の修理は不能だがOM−2Nなら修理できるという時期があったのは事実だ。おそらく今はどちらもだめだろう。OM−2を手に入れたなら、やはり専用ストロボを買わなければ意味がない。ここで難しいのがシューとストロボの組み合わせである。そもそものOM−2にはシュー2が対応していた。ストロボはクイックオート310でTTLオートが可能になる。これが、OM−2発売当時の姿であるが、クイックオート310は単体ではバウンスができない。バウンスグリップなるものを買えばできるようになるが、これでは完全にグリップタイプのストロボになってしまう。これがOM−2Nと同時発売のT32ならクリップオンのままバウンスができる。T32をOM−2Nに取り付けるとき必要なのがシュー4、OM−2に付けるとき必要なのがシュー3。実はこのシュー3はなかなか手に入らない。考えてみればOM−2+クイックオート310を持っている人は、特に事情がなければT32は買わないわけで、そうなるとシュー3の需要はあまりなかったことになる。しかし、T32がお安く手に入る今日、シュー3を探したくなるのは人情というものであろう。
私のOM−2だが、実はジャンクで購入した。ごく近所にあるカメラ屋さんに久しぶりに行ったとき、偶然発見したのだ。プリズムが完璧なOM−2が3000円なら不動であっても「買い」だ。ミラーがあがったままになっているが、これはリセットをすれば直るかもしれない。と、思って買ってきたのだがそこまで世の中甘くはなかった。しかしせっかくだから直したい。今までの経験上これは電磁石の固着のような気がする。キヤノンAシリーズならどこに電磁石があるかすぐわかるのだが、OM―2は初めてなのでよくわからない。底板をはずして手持ちの資料を手がかりにいろいろ試してみたところ、何とか電磁石を解放することに成功した。電池を入れて再チェックすると、何事もなかったように動き出した。ラッキー。たまにはこんなこともある。
そうなると、当然ストロボをTTLオートしたくなる。これができなければOM−2を保有する意味がない。ジャンクで買ったのだから当然ホットシューは付いていなかった。そこでわたしは、シューとストロボを探し求める砂漠の旅人となって新宿中野方面を放浪した。ストロボはいくらでもあるのだが、シューは割と見つからないモノである。OM−2にくっついた状態でならいくらでもあるのだが、「シューだけはずして売ってくれ」とはちょっと言えない。「ここで見つからなければ四谷3丁目まで足を延ばそうか」と思って入った「BOX」にシュー2があった。しかも大量に。無造作にビニール袋に入った状態で20個くらいはあっただろうか?もっともこのお店は細かいアクセサリー類はすべて無造作に扱われている。このあたりがこのお店の魅力だ。しかし、これだけたくさんのシュー2があってもシュー3はなかった。この時点でT32という選択肢はなくなり、クイックオート310を買うことになった。まあ、OM−2オリジナルの形になったわけだから、これはこれで良しとしよう(笑)。
あとは、ワインダーだが...
OM−2とOM−1はサイズ、デザインともほとんど同じである。使い勝手も意図してほとんど同じになっている。マニュアルモードでOM−2を使うと、ほとんどOM−1と同じになる。OM−1のユーザーなら違和感なくOM−2を使うことができただろう。OM−2は電子シャッター、OM−1はメカシャッターで違いはあるのだが、シャッターの感触も音もよく似ている。同時代のカメラと比較して、低ショックで静かで柔らかなシャッターである。これはOMヒトケタシリーズに共通する魅力なのかもしれない。OM−3や−4は知らないが。
突き詰めてみると、OM−1、−2の魅力は、この「操作したときの感触」に尽きるのではないかと思う。OM−1を上回る性能のカメラが市場を埋め尽くしても、人気が衰えなかった「玄人うけする魅力」だと思う。オートフォーカス全盛の今日でも、それは決して色あせていない。