アーガスC44


このカメラはアメリカ製。アメリカ製のカメラと言われてもピンと来ない方が少なくないと思う。古くはコダックやアンスコと言ったメーカーがカメラを作ってたし、コダックブローニーシリーズなどはかなりの市場を形成していた時期もあったが、今ではBell Hawell や Vivitarが細々とコンパクトカメラを作っている程度で、あとはあってもOEMの一眼レフと言った状態である。「レンガ」の愛称で比較的有名なアーガスC3はC44の先代に当たる。C44は「せっかくアメリカにいるのだからアメリカのカメラを」とコンセプトで、2000年秋のデンバーカメラトレードショーで購入した。基本的にはレンズ交換式のレンジファインダーカメラである。金属製のがっちりしたボディは660gもあり、見るからに頑丈そうだ。ファインダーも比較的見やすく、ピントの調整も容易。おもしろいのはピントの調整で、この機構はアーガスC3から受け継いるのだが、レンズのピントリングにギアが直結していてカメラを構えたとき右手の人差し指でピントが調整できるようになっている。コンタックスのニコンのレンジファインダーカメラに似た構造である。アーガスの場合はピント調節用のギアがカメラの外装に付けられており、デザイン上のポイントにもなっている。ただ、ギアが少し堅いので使い勝手はそれほどよくない。私は50mmレンズ付きで購入したが、そのほか35mm、105mm、135mmがラインアップされていた。残念なのは、シャッター速度で1/10〜1/300までしかない。当時なら一応中級機の位置づけのはずだが、このシャッターはいただけない。C44では今の高感度フィルムの時代にはちょっと厳しいかもしれない。巻き上げ、巻き戻しがノブ式(レバー、クランクではない)、フィルムカウンターも手動セットだが、これは時代的にもやむを得ないかもしれない。C44の後期型はノブではなく巻上げレバーを持っている。私が買ったC44は状態も良好でく、新品同様の皮ケースに入って$40だった。激安のつもりで買ったのだが、ネットオークションでもこれくらいの値段で取り引きされているところを見ると、アメリカではさほど人気のない機種なのかもしれない。


操作した感じはごつごつして、「なめらかな操作感覚」とはほど遠い。ノブ式の巻き上げは重く、巻き上げていると手が痛くなるし、巻き戻しにいたっては一種のは拷問である。巻き戻しのためにパーフォレーションをフリーにするボタンが見当たらずあわてたが、どうやら巻き上げノブを持ち上げるとフリーになるようだ。このカメラは繊細な日本人ではなく、ガサツなアメリカ人の大きな手で怪力を使ってガシガシ使いべきなのかもしれない。さらに驚いたのはシャッターの音である。レンジファインダーなのでそれなりに静かな音を期待したのだが、信じられないくらいの大音響であった。普通の一眼レフよりはるかかに大きな音がする。私はてっきりミラーが入っているのかと思ったくらいだ。音を小さくしようという努力の跡は全く感じられない。アクセサリーシューはホットシューになっていて、直接ストロボをつけることができるのは優れている点である。これ自体はすごく便利なのだが、シュー自体が堅くて私はストロボを一つ壊してしまった。全く困ったカメラである。「アメリカ人が精密機械を作ったらこんなものしかできない」と言う典型的な作品と言えるだろう。


と・こ・ろ・が。そんなわけでろくに期待もしないでフィルムを1本通してみたのだが、まあびっくり。これがものすごくよく写る。レンズがいいだろうと思う。CINTAGON50mmf2.8と言うレンズで、お世辞にも有名なレンズではないと思う。COATEDと書いてあるので、何層かはわからないが(たぶん単層)きちんとコートしてあるのだろう。難しいことはわからないが、色がきれいでしかも鮮やかに写ってる。カメラは見かけによらないものだ。これは本当にいい買い物だった。調子にのって、交換レンズを揃え、なんとなくシステムとしてそろえてしまった。