EDIXA PRISMAT

 私はこのカメラのことを良く知りません。「良く知らないのに買ったのか?」と言われると「そのとおりです」としか言いようがないのですが、ともかく買ってしまったのです。購入先はいつものデンバーカメラトレードショーです。2001年春のショーでした。実はこのカメラ、ジャンク状態でした。シャッターが切れたり切れなかったり、またスローシャッターは付いているのですが全然機能していませんでした。しっかりした皮ケースに入ってその状態で$20。レンズ付きの一眼レフのお値段ですから、まあダメモトで買っても良い値段でしょう。

 私が住んでいるコロラド州は、はっきり言って田舎ですので中古カメラやさんも少なくジャンクカメラもなかなか手に入りません。e-bayと言う手もあるのですが、e-bayで流通しているジャンクは本当に動かないジャンクが多く、「部品取り」以外としてはあまり活用の余地はありません。私がe-bayで買ったジャンクは動かないどころか、分解の途中でばらした部品をプラスチックのケースのなかに入れて送ってきました。そもそもが部品取りの目的で落札したものでしたから文句はありませんが、「なんかなぁ」と言う感じです。ジャンクカメラは、カメラを使っていれば一定数発生するはずですから、コロラド州にもあるはずなのですがなぜか私の周りにはなかなかやってきません。これに関しては、新宿の方が恵まれています。

 さて、と言うわけでEdixa Prismat(のジャンク)を$20で買ってきました。どんなカメラかわからないのですが、底板にMade in Germanyと誇らしげに書いてありますからきっとドイツ製なのでしょう。レンズのマウントはM42、これならいろいろと使い回しが利きます。レンズはCassaron50mmf2.8が付いてきましたが、聞いたことのないブランドです。カメラはクイックリターンミラーが付いていて、自動絞りに対応していますが、シャッターダイヤルは回転式、スローシャッターのダイヤルは別に付いています。「1950年代後半から60年代か」と言う感じです。当然ですが、TTL露出計もAEもついてません。と言うか露出計自体が全くありません。これこそ正真正銘の完全マニュアルカメラです(自動絞りは許してください)。

 しばらく放って置いたのですが自然に治癒する様子もないので、修理をしてみることにしました。古いカメラでスローがきちんと動かないのは多くの場合スローガバナーのオイル切れです。底板を開けてスローガバナーにオイルを指してみました。しばらくするときちんとスローがでるようになり、シャッターが時々引っかかっていたのも嘘のように直りました。だから機械式のカメラは大好きです。
 シボ皮がボロボロだったのでついでに新しい皮に張り替えてみました。いかがでしょうか?うちの家内にはものすごい不評でした。手元にこの色の皮しかなかったのです。

 早速実写試験を行いました。しかし、何というかこの時代のカメラというのは人に優しくないと言うのか、人間様が機械に合わせなければならないと言うのか、そう言うレベルのフラストレーションを強く感じます。技術の進歩は偉大だと言わざるを得ません。何も難しいことではないのですが、どうしてこのカメラは使っていると痛くなるのでしょう?巻き上げレバーに滑り止めのギザギザが付いているのですが、これが痛い。プラスチックでカバーしてくれるかアサヒペンタックスのように人に優しいデザインにしてくれればいいのに。そして、取り外し式のアクセサリーシューなのですが、これがまた痛い。単に日本人の骨格にあっていないだけかもしれませんが、アクセサリーシューの角がとがっていて右目でファインダーを覗くと左側の角が額に突き刺さるのです。気を付けていれば大丈夫なのですが、油断するとグサッときます。そう言えばニコンFのペンタプリズムも凶器としても使えるくらい尖っていますね。

 カメラに付いてきたCassaronと言う標準レンズですが、とってもチープに見えます。カメラが全金属構造なのにレンズは鏡筒がプラスチックです。もちろんレンズはガラスですが。しかもとても小さい。本当に大丈夫なのだろうかと不安になります。一緒に秋のトレードショーでペンタックスSPと一緒に手に入れたVivitarの35mmf2.8も使ってみました。このレンズよく見るとメイドインジャパンです。どこのOEMなんでしょう?

 一通り撮影を終えて、あまり期待しないでプリントに出してみてびっくりです。これが信じられないくらいよく写っているのです。一応作例もあります。こちらをどうぞ。「何であんなレンズでこんな素晴らしい色、コントラストが出るんだー」と思わず叫びたくなりました。
 後でわかったのですがCassaronというのはドイツの銘玉と呼ばれている、その筋では定評のあるレンズなんだそうです。まさに知らぬが仏です。Vivitarのほうは、おそらく富岡光学あたりのOEMではないかという話です。これまたその筋では有名な会社です。私は無知ゆえに、世界を代表するレンズを無造作に使っていたわけです。大変失礼いたしました。






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