ヤシカエレクトロ35GS ゴールドメカニカ

1960年代から70年代を席巻したレンジファインダーカメラのヒット作、ヤシカエレクトロシリーズの比較的前期のモデルです。この時期のレンジファインダーカメラは今のコンパクトカメラと比較して非常に作りがしっかりしています。その分大きくて重く、とても「コンパクトカメラ」とは呼べないんですが。一番違う点はたぶんレンズでしょうね。今のAFコンパクトカメラは写りよりもズーム比を優先しているのではないかと思うほどで、カタログ性能はすばらしいのですが、プリントがあがってきて「がっかり」と言うことが少なくありません。開放f値もf5.6とかf8で、これじゃあ室内はどうする?「大丈夫、暗くなったら自動的にストロボが光ります」という便利でお節介で余計な機能まで付いています。まあ、暗いところをノーストロボで撮りたいような時はこんなカメラは使わないのでしょう。私はカメラを無節操に買うんですが、コンパクトカメラ(アメリカ式に言うと「ポイントアンドシュート」)は未だにキヤノンオートボーイ2です。APSは結局満足する質が得られなくてお蔵入りになりましたし、最近のコンパクトカメラは手を出していません。基本的にこのカテゴリーならオートボーイ2で満足しているんです。

さて、ヤシカエレクトロ時代のコンパクトカメラのレンズはすばらしいものばかりです。ヤシカエレクトロのヤシノンは開放値f1.7で、えっ?と思うような素晴らしい描写をしてくれます。一眼レフ顔負けです。ところがヤシカエレクトロだけではなく、私が持っているオリンパス35DCもキャノネットQL17も、明るいレンズで非常に優れた画質を提供してくれます。最近高価格なコンパクトカメラが何社からか発売されていますが、たぶん画質的にはこのころの大型コンパクトカメラ(?)にはかなわないのではないでしょうか?今のカメラはやはりコンパクトに設計する分どうしてもレンズにしわ寄せが来ているような気がするのですが。もちろん高いから私は持っていません。でも、評判はいいですね。

私がA−1を買う以前のしばらくの間、ヤシカエレクトロ35はかなり気になるカメラでした。小学校の卒業を機にオリンパス35DCを買った(買ってもらった)時は、まだあまりカメラには詳しくなく、「オリンパスペンEEを使っていたからそのまま35DC」と言う感じで選んだのですが、買ってからエレクトロの存在を知ってかなり後悔しました。当時はエレクトロ35GXの時代です。35DCは露出の制御はプログラム、ユーザーがやることは二重像合致式距離計をつかってピントを合わせるだけです。今ならピントを合わせること自体すごいことですが、当時それは当たり前、それよりもプログラムEEがおもしろくなくて仕方ありませんでした。ヤシカエレクトロ35GXは絞り優先EEです。しかも、ヤシカエレクトロには、なんとフロントコンバージョンながら交換レンズがつけられるのです。当時は小学生が一眼レフを持つなんてほとんどあり得ない時代でしたから、コンパクトカメラでレンズ交換ができるカメラは、これはもうそれだけで垂涎の的でした。望遠レンズですぜ旦那、望遠レンズ。若者の夢、望遠レンズ。ちなみに小学生の頃の友人で一人だけ一眼レフを持っているのがいました。きっと家が豊かだったのでしょう。ちなみにカメラはアサヒペンタックスSPIIでした。普及機ですがこれでも当時としては画期的な出来事だったのです。若い世代に一眼レフが普及し出すのはミノルタX−7くらいからでしょう。その、フロントコンバージョンレンズですが、今にしてみるとそれほど大したものではありませんでした。望遠レンズと言うことで勝手に想像が広がって135mmくらいのレンズを想像していたのですが、実際は素の状態で45mmのレンズがコンバージョンレンズをつけて55mmから60mmくらいになる程度です。ほんの気持ち望遠気味と言う感じです。まさに知らぬが仏でした。

このカメラは家内がボランティアをしているリサイクルショップで、店頭に並ぶ前に奪取してきました。$20と言うきわめてリーズナブルなお値段でした。まあ、アメリカのリサイクルショップはこんなものです。すごいのはカメラ本体だけでなく、ストラップ、テレ・ワイドのフロントコンバージョンレンズ、外付けファインダー、専用フード、専用フィルター、ヤシカ製ケーブルレリーズ、そしてヤシカ製専用シリカゲル(乾燥剤)が専用アタッシュケースに入ってやって来ました。日本国内ではこのセットで発売されたのはGXなのだそうです。GSはアメリカのみの発売か、あるいはGXセットにあとからGSを入れた可能性もあります。取り説はすべてGXで作られていました。驚いたのはフィルターでなんとタングステン用のフィルターが付いています。このクラスのカメラにタングステン用のフィルターを使っていたんですね。いざ、撮影をしようと思って早速困ったのが電池の調達です。このカメラHN−4Nという水源電池を使うのですが当然もう生産中止になっています。関東カメラのアダプターもこっちでは手に入りません。ところがそこは物持ちの良いアメリカ、水銀電池はありませんが、同じサイズのアルカリ電池が発売されていました。値段も$5程度でした。これで電池の問題はOKです。日本でこのカメラを使っている方たちは、電池のアダプターを自作されているそうです。

基本的には絞り優先EEでファインダー内に赤矢印がでれば露出オーバー、黄色矢印がでれば手ぶれ警告と言うシンプルな表示です。また同じシークエンスの電球が軍艦部にも付いています。メーターは付いていませんがその分耐久性が向上したようです。シャッター速度は1/500まで、長時間露出の方は具体的な数字は書いてありませんが可能です。写りの方は申し分ありません。ヤシノンレンズは本当にきれいに写ります。

この時代のこのクラスのカメラは水銀電池を使用しているものが多く、電池入手の困難からジャンクに近い値段で取り引きされることが多いようです。しかしその写りは今の高―――いコンパクトカメラに匹敵します。そう言った意味では本当にお買い得と言えるでしょう。

ヤシカエレクトロには良くできたホームページがあります。ほんごうさんの魅惑のエレクトロルームです。





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