ニコンFE

高校1年生の頃の同じクラスにカメラ小僧が私を含めて3人いた。3人ともへそ曲がりだったため写真部の勧誘を無視し、独自に活動をしていた。その友人達の持っていたカメラというのがニコンFEとペンタックスLXだった。なんとも渋い取り合わせである。A−1を持っていた私が、なんだか子供に見えてくる。当時も今も子供は機能てんこ盛りを好むものだが、こいつらはすでに人生を達観していたのだろうか?ちなみにFEを持っていた友達の方は外科のお医者さんになっている。

私のFEだが、買ったのはごく最近でしかもかなり安く手に入れた。FEはFE2がでていることもあり、値崩れしても良さそうなものなのだが、さすがはニコン、そう簡単には安くならない。先代のニコマートELだって2万円近くするくらいだから(骨董価値?)、FEが少々高くても仕方がない。私のFEはバッテリーチェックレバーが折れていたおかげで衝動買いできるレベルで手に入れることができた。せっかくだからせめて1本はニッコールレンズを、と思い標準系ズームを買った。ニッコール35mm-70mm f3.5-4.8である。ほくそ笑んでおられる方はもうご存じの話だと思うが、このレンズ、ニッコールと書いてあるが、FE10やFM10についてきたOEMである。すっかりだまされてしまった。きれいなニッコールが5000円だったんで、なんかおかしいとは思ったのだが。でも、写りは悪くない。サービスサイズでの話でだが、私は十分満足している。ちゃんとニッコールって書いてあるし。

ニコンは保守的なところがあるので、マルチモードAEに飛びつくようなことはしなかった。ニコン初のマルチモードAE機は1983年のFAだから、XDの発売から実に6年間マルチモードAEの採用を見送ってきたことになる。このあたりにもニコンという会社のスタンスを感じることができるだろう。良い悪いの問題ではなく、それが「ニコン」なのだ。保守的といったが、お客さんを大事にするのも、ニコンの姿勢だと思う。私の買ったFEはスクリーンにちょっと傷が付いていた。交換しなければならないほどではなかったのだが、やはり気になる。そこで初めて知ったのだが、FEのスクリーンはなんと現行品である。これは正直驚いた。AE−1P用のスクリーンなんて製造中止になってから15年近くたつ。キヤノンはそれぞれの機種ごとに専用アクセサリーを出しては、ボディの生産終了とともにアクセサリーの生産もうち切っている。もちろんニコンもFEユーザーのためにスクリーンを作っているわけではなく、FEと互換性のある後継機を作り続けているのである。さすがFマウントのボディを作り続ける会社だ。もう一つはFM2という長寿カメラがあるお陰だと思う。ただ、このアクセサリーの互換性の問題は、生産中止になったアクセサリーを血眼で探す身としては、純粋にうらやましいところだ。 

ニコンFEは私がA−1を購入したときには、すでにシンプルニコンのキャッチフレーズで市場にでていた。ただ、私はニコンのカメラを購入の候補にはしなかった。なぜか?性能が地味だったからである。さらにその割には値段が高かった。いまなら「ニコンだからねぇ」で済むのだが、当時はブランド意識なんてかけらもなかったから(実は今もない、私はシャネルをチャンネルと読んだ男である)、カタログでみて地味な印象を受けるカメラを選択肢には入なかったのである。D. D.ダンカンがニコンを持って朝鮮戦争に言った話を知るのはもっと後になってであるす。考えてみて欲しい。ニコンFEがボディのみで¥69,000。同じAE+マニュアルのAE−1は¥50,000。絞り優先AEとマニュアルのリコーXR−2sも確か5万円くらいだったと思う。そして、FEとXR−2sのカタログ上の性能はほぼ同じであり、ファインダー内の表示もほぼ同じなのだ。今この両者を手に取ってみると、その値段なりの品質の差は歴然としているのだが、中学生の頃はそんなことはわからなかったのだ。

実績、信頼性、ユーザーに対するメーカーの姿勢というようなものはカタログには載っていない。それがどのような形で値段に反映されるのかはわからないが、ニコンは確かに目に見えない形で価値のあるメーカーなのだと思う。でも私はやっぱりカタログをみて、性能がよくて安いカメラを買ってしまうのだった。



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