コニカ KANPAI

 1980年代前半のカメラだったと思います。基本性能は固定焦点・自動露出の35mmコンパクトカメラです。ボディは完全なプラスチックで、今のカメラに比べればちょっと厚みはありますが、軽いおしゃれなカメラといえるでしょう。私が持っているのは真っ赤なボディですがバリエーションがあったような気がします。気がするだけでなかったかもしれません。レンズはKONIKA LENSとだけ書いてあって、焦点距離、開放f値も書いてありません。ファインダーを覗いた感じでは35mm前後だと思います。ファインダー内の表示もフレーム以外は一切ありません。一応オートデート機能も付いています。この時代らしく、巻き上げ、巻き戻しはすべて自動です。明るさに応じて自動的にストロボが発光する機能も付いています。当時としては先進的な機能を搭載していますから、オートフォーカスでないのが少し残念ですね。

 と、これだけならただの安めのコンパクトカメラなのですが(オートフォーカスではないので)、このカメラにはこのカメラにしかないちょっとおもしろい機能が付いています。正面から見てレンズの左側にマイクの絵が描いてあります。このスイッチを押し上げると中からマイクがでてきて、音響センサーの役割をします。つまりマイクが大きな音を拾ったときにシャッターが切れるという寸法です。センサーが反応する音も大、中、小の3段階から選ぶことが出来ます。さらに、三脚のねじ穴が左右10度くらいずつ動くようになっており、専用の三脚につけると撮影後別のアングルに首を振ります。この首振り動作は、ランダムに動いているようで、特に「音のする方向に向く」ようなスーパーな機能は付いていないようです。また、三脚にセットした状態でもフレーミングが確認しやすいように、ウエストレベルファインダーがはじめから内蔵されているのも優れものです。つまりこのカメラは、パーティに持ってゆき専用三脚にセットして無人撮影を行うためのカメラなのです。はじめに「オートフォーカスでないのが残念」と書きましたが、無人撮影をするなら狭いフォーカスエリアでピンぼけを続出するよりは、はじめからパンフォーカスと割り切った方がいい結果が得られることでしょう。

 このようなキワモノっぽいカメラというのは、本流になることは絶対あり得ませんが、人間の英知がある限り消滅することもまた絶対あり得ません。私の記憶に鮮明なキワモノと言えば、ナショナル(パナソニック)のラジカメでしょう。その名の通りラジオとカメラをくっつけただけです。ラジオを聴きながら写真が撮れるというのが売りでした。当時マーケッティングをしていたかどうかは定かではありませんが、もし事前に市場調査をしたのなら、明らかに調査ミスでしょうね。どう考えてもそんなニーズが市場にあったとは思えません。雑誌広告がまた秀逸で、「ありし日」と言うタイトルで真空管ラジオから流れるラジオ放送を聞きながら巨大なボックスカメラで写真を撮っている大昔のカメラマンがモデルでした。確かラジカメは110カメラでしたので、サイズは今のコンパクトカメラ並です。「現代の技術でこんなに小さくなりました」という、非常に購買意欲をそそる広告でした。このカメラがどれくらい売れたかは知りませんが、中古では見たことがありません。たぶんあってもジャンクかごに一直線でしょう。

 キワモノカメラの歴史は古く、乾板が登場してまもなくカメラ市場に姿を現しました。時期的には1885年前後です。比較的有名なのがベストのボタンから写真を撮るC. P. Stirnです。ドイツ製のカメラで一種のスパイ用です。そのほか、シルクハットの中にカメラを組み込んだもの、単眼鏡や双眼鏡の中に組み込んだもの、ポケットウオッチとカメラを合体させたもの、ステッキに組み込んだものなどが次々発売されました。戦後発売されたもので有名なのがヘップバーンの「ローマの休日」で使われた、ライターとカメラを合体させたエコー8(日本製)でしょう。ごく最近では腕時計とデジタルカメラを合体させたものがカシオから発売されました。まだ、デジカメがモノクロだったので買いませんでしたが、カラーで写真が撮れるようになったら買っても良いなと思っています。

 さて、肝心のKANPAIですが、パーティや宴会の余興としては十分楽しめます。マイクスイッチを押し上げると、音声のレベルインジケーターもオンになります。音の大きさに応じてカメラ正面にあるランプが上下して、一定のレベルに達するとストロボが光って撮影されます。このランプは鮮やかでとてもきれいですし、時折ストロボが光るのでみんなの注目も集めます。カメラに向かって叫んでくれる人がいるとおもしろい写真が撮れます。
 写りの方は大したことはありません。この手のカメラに多くを望むべきではないのでしょう。パーティのお楽しみ用として、割り切って使うべきだと思います。

 私はこのカメラをジャンクかごの中で見つけて購入しました。それ以外でこのカメラを中古市場で見かけたことはありません。おもしろいカメラなのですが今となっては見つけることがまず難しいでしょう。このカメラはアメリカでもギャグとして使わせてもらっています。とりあえず「つかみ」はOKです。













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