オリンパス OM−1

Aシリーズと同世代に区分したが、発売は1972年なので実際にはAシリーズよりちょっと前である。ただ、OM−1はOM−1Nにマイナーチェンジされ、1980年代まで製造販売されていたので、そう言った意味ではAシリーズと同世代と言っていいだろう。
OM−1は名機である。どこに行っても誰に聞いてもそう言う。雑誌やムックにも頻繁に取り上げられているし、ディープなホームページも紹介しきれないくらいたくさんある。まったくAシリーズとはえらい違いでうらやましい限りだ。いったい何が優れているのだろうか?露出の制御は定点式のマニュアル。シャッタースピードは1秒から1/1000秒。スペック上で目をむくような性能はない。

その昔のOM−1の広告には「バクテリアから宇宙まで」と書いてあった。カタログもOMシステムを強調しており、カメラ単体ではなくシステムとして売り込んでいた。そういえばレンズにもOM−SYSTEMって書いてある。そのOMシステムはそれはそれは見事で、なんというか撮影者に夢を与えてくれるカタログであったのを覚えいている。特に接写関係に力を入れていた。もう一つOM−1の功績に、小型化があった。1970年代前半の一眼レフはAシリーズと比べても一回り大きく、重かった。キヤノンならF−1やEF、ニコンならF2やニコマートELが標準的な大きさであった。一眼レフは「重く、大きく、ショックが大きい」のが当たり前の時代だったのだ。それらに比べてOM−1は本当に小さいカメラだった。今のAF一眼レフは軽く大きく(笑)なっているが、OM−1は本当に小さく、軽いカメラであった。そしてさらに驚くのはその音とショックの小ささである。恐らく今のカメラでも、OM−1のレベルに達しているものはそうはないのではないか。大げさではなく「えっ」と思うくらいショックが小さい。

結局その小ささ、操作感覚の良さ、システムの充実が受けてOM−1はベストセラーになった。OM−1以降に開発された一眼レフは、OM−1クラスの大きさを目標に作られている。この傾向に終止符を打つのがモータードライブ内蔵の一眼レフの登場である。

私がA−1の購入を検討していた1980年頃はさすがのOM−1もやや旧式の部類に入っており、ファインダー内に撮影情報(絞りとシャッター速度)を表示しないカメラはOM−1とリコーXR−500くらいで、すでにAEが一般的になっていた。だから私が購入候補として検討したのはOM−2の方だった。これもまたすごいカメラであった。ダイレクト測光によるストロボの制御は本当に魅力的で、A−1がダイレクト測光でなかったことを心底悔やんだ。ただ、キヤノンがこの方式を初めて採用するのはT−90になってからであるから、OM−2より約10年遅れたことになる。私は今でも特にストロボ撮影に関してはこの方式を上回るものはないと思っている。

最近オリンパスはすっかりデジカメの方にシフトしてしまって、まもなく一眼レフの販売も終了する。デジタルの方では大成功を納めているので、一眼レフの方の採算が合わなければ切り捨てるのは企業の宿命であろう。それにしてもOMシリーズはよくがんばったと思う。ペンタックスLXが生産終了したあとも、生産を続けていたわけで、これはオリンパスがユーザーの側に立った企業であることを証明することになるだろう。いよいよマニュアルフォーカスの新品一眼レフは数が少なってしまった(Vivitarという手はあるが)。個人的にはOM−5やOM−6に期待したいところであったが、では「それらがどんなカメラになるのか?」といわれると、考えてしまう。OM−5は当然フルメカニカルのマニュアル機になるだろう。メカニカルでもシャッター速度は1/4000秒までは欲しい。ファインダーの表示はメーターがLED、チタンボディの方がマニアには受けそうだ。せっかくだからスポット測光も選べるようにして...と考えると結局OM−3とあんまり変わらないカメラになってしまう。それだけOM−3の完成度が高いと言うことでもあるし、マニュアル露出+メカニカルのカメラに求めることは結局すでにほとんど達成されているのだろう。OM−6はもっと難しい。マルチモードのマニュアルフォーカス機では意味がないし、ユーザーはOMシリーズにそんなものは求めていない。それならリコーXR−10Pで十分である。(XR−10Pはいいカメラだと思う。ちょっと欲しい)。今の時代オートフォーカスでなければ最新のスペックを追い求めてもあまり意味がないだろう。かといってOM−2の復刻じゃあしょうがない。OMシリーズというのは本当に難しい。となると結局OM−3、OM−4のラインが最後のOMとしてふさわしかったのかもしれない。ニコンF3、ペンタックスLXも消えた今、マニュアルフォーカスのニーズを一手に引き受けて、売り上げが伸びたりしないかと期待していたが、それはかなわなかったようだ。


私のOM−1は、実はフリーマーケットで手に入れたものである。カメラ屋さんが出店していたブースで、フリーマーケットには珍しく1ヶ月の保証が付いていた。OM−1の後期型でOM−1MDというやつだ。フリーマーケットは私もときどき利用する。カメラの流通経路としてはもちろんマイナーではあるが、ときおりものすごいお買い得品があるのでやめらない。ただ、逆に全く相場を無視して、ほとんど価値のないカメラにものすごい値段が付いていることもあるので、これまた注意が必要である。あと基本的には保証はないので、誰かが素人修理をしたものが、混じっている可能性もある。あとは自分の眼力勝負でになるだろう。まあ、最近ではネットオークションの方が盛んかも知れないが。


中古市場でみた場合のOM−1は、プリズムの腐食とシャッターダイヤルのへたりが深刻である。私のOM−1も少しだけプリズムが腐食している。ジャンクかごの中にあるのはたいていプリズムがやられていると思って間違いない。1998年頃まではサービスステーションでの交換も可能だったようだが、私が1999年にオーバーホールしたときはもうプリズムの在庫がなかった。最近某カメラ店で再生産したのか、一部でプリズム交換が可能になったらしいが、詳しいことはわからない。また、マウント部にあるシャッターダイヤルはなぜかスカスカになりやすいようで、買うときは注意が必要である。



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