レチナIIIC
作例はこちらから
レチナIIICは先月のカメラトレードショー(デンバー郊外、牧場の隣)で買いました。この1ヶ月重点的に使ってみての感想ですが、
「素晴らしい、素晴らしすぎる」
でした。あんまり感動したので「レチナ物語」と言うコンテンツでメインメニューに入れようかと思ったのですが、インターネットを調べてみるとレチナに関してはレチナ専門店「レチナハウス」をはじめ気合いの入ったホームページがたくさんあって、とても昨日今日レチナに触った人間が気安くものを言える状況にはありませんでした。仕方がないので他のカメラと同じように「蛇足集」の中に入れさせていただきます。つまり、「キヤノンオートボーイ2」や「コニカKANPAI」と同じ扱いです。
気づいていらっしゃる方もおられるでしょうが(と言って対したことではないのですが)うちのホームページはキヤノンAシリーズのホームページです。ですから主体はキヤノンAシリーズで、当然メインメニューはAシリーズが目立つようになっています。蛇足集もキヤノンAシリーズと同世代と言うだけでマミヤZE−XやリコーXR−2sまでが比較的いい位置を占めています。その代わり今回のように名機レチナIIICと言えどもこのような扱いを受けてしまうのです。一時期(ホームページビルダーを輸入する前)Aシリーズのネタが切れて、その代わり蛇足集と雑文集が充実してしまって、自分のせいでホームページ存続の危機に立たされたことがあります。「このまま行くと蛇足集がメインコンテンツになり、ホームページのタイトルが「蛇足集」というきわめて情けないことになりかねない」、と言う追いつめられた心境になりました。その後、日本からホームページビルダーだ届き、Aシリーズ各機種の「使い方」というページを作ることができ、なんとか「AシリーズユーザーによるAシリーズユーザーのためのホームページ」を存続することができたのです。MS−WORDではあのページは作れません。そのせいで私は意地になって毎週1機種ずつと言うハイペースで「使い方」のページを更新して行きました。おかげさまでなんとか体裁が整いつつあります。
ここでふと思ったのですが、今私がライカM3を買っても、きっとM3のテキストは蛇足集→フォーカルプレーンシャッターのコーナーに置かれて、「ゾルキーI」や「アーガスC44」と同じ扱いを受けるんでしょうね、きっと。うーん、それでこそ「キヤノンAシリーズに萌え萌え」です。もちろん買う予定はまったくないですが。
舶来カメラに疎い私でもさすがにレチナの名前は日本にいた頃から知っていました。しかしそれはあくまで名前を知っているという程度で、レチナの印象は「精密な折り畳み式のカメラ」と言う程度しかありませんでした。そのうえ日本では舶来カメラ専門店は怖くてほとんど近寄りませんでしたので、それ以上の知識も認識も芽生えようはずがありませんでした。値段は、まあ舶来カメラとしては安い方でしょうか?021タイプ(いわゆる小窓)が3万円くらい028タイプ(いわゆる大窓)が7〜8万円くらいと認識しています。大窓はともかく小窓なら決して手のでない値段ではないですね。今考えると日本ではレチナはお買い得のような気がするのですが、当時は「買いたい」と言う気は起きませんでした。
じつはレチナのことを詳しく知ったのはノスタルジックカメラマクロ図解と言うムックでした。この本は一応Vol.1〜4まで4冊あって、それぞれ見開きで一つのカメラの紹介をしています。写真がきれいで内容も豊富なのですが、時々とんでもない間違いがあるので油断できません。中古カメラがブームになり始めた頃の雑誌ですから、まあ多くを望んではいけません。とりあえず十分楽しめる本でした。その本にクラシックカメラを使って実際に写真を撮ってみるページがあり、レチナIIICが取り上げられていたのです。おしゃれなカメラだとは思ったのですが、お作法が多そうでめんどくさそうでした。
レチナはコダックのカメラですが、アメリカのコダックではありません。ドイツにあったドイツコダックという会社です。もちろん同じコダックですが、アメリカのコダックとドイツコダックでは作っていたカメラは全く別です。おそらくアメリカ人にはレチナのようなカメラは作れません。ドイツコダックがレチナIIICを作っていた時期にアメリカのコダックが作っていたのシグネットシリーズです。同じコダックの名前が付いていますが、その機械としての質の差は歴然としています。誤解の無いように申し上げますが、シグネットの写りは素晴らしいです。エクターシリーズのレンズは現在でも十分通用する品質です。ただ、カメラ本体となるとヘリコイドの付いた箱にレンズとシャッターをくっつけただけと言うような感じです。かわいらしいデザインですが、精密感はまったく感じません。それに対しレチナの方は、「よくこんなカメラを作ったものですね」と思うほどの精密カメラです。折り畳むと言う面倒な構造を持ちながら、それぞれの操作がかちっとした精度で組み立てられており、触って楽しいカメラに仕上がっています。そればかりかレンズの交換も可能です。根本的にシグネットとレチナは別な人が作ったカメラなのです。
ドイツコダックは元々はドイツシュッツガルトにあったナーゲル社とアメリカのコダックが合併して1932年にできた会社です。最初のレチナは合併2年後の1934年12月に35mmフィルムを使った折り畳み式カメラとして発売されました。そもそもレチナは「国民カメラ」として作られたそうで、基本的には普及機なのだそうです。当時の値段はわかりませんし、それがどれくらいの価値だったのか知る由もありませんが、「レチナ1台・家1軒」ではなかったのでしょう。値段のせいか写りのせいかわかりませんがレチナは当時としてはよく売れたカメラのようです。そのおかげで中古市場でも比較的見かけるカメラです。
私のレチナですが、一応大窓です。大窓と小窓の違いは、ファインダーが大きくなって見やすくなったこと、ファインダー内に35mmと80mmのブライトフレームが付いたこと、露出計がフルレンジになり、明るさによってカバーを開閉しなくて良くなったことです。実は大窓にも2種類あって、1970年代に120台だけ再生産された珍品中の珍品があるそうです。世界に120台ですから値段も大したものらしいです。
レチナIIICは重量は結構あるのですが、折り畳むとコンパクトになるので持ち運びには便利です。使うときは全面のカバーを開けば準備完了です。IIICは適正露出をEV(LV)値で示すセレン光電池式の露出計が付いています。露出計の示す値を読みとってレンズ周りにあるEV値のスケールであわせれば露出はOKです。絞りを絞れば自動的にシャッター速度が遅くなる便利な機
能です。ただ、露出計はセレン光電池ですから当然壊れる可能性もあり、その場合このEV値を入力するシステムはただ面倒くさいだけになります。露出計の壊れたIIICよりはIICの方がいいですね。しかし、セレン光電池というのは割と長寿命ですね。その昔、「セレン光電池の寿命は10年だ!」と言う意見が大勢でしたが、私のレチナもコンタフレックスもオリンパスペンEE3もDEMIもみんな元気です。
トレードショーで買ったのは本体だけだったのですが、あんまりすばらしい写りに感動してしまって早速e−bayで交換レンズクセノン80mmf4と35mmf4を落札してしまいました。ついでにケースも落札し何となくワンセット揃ってしまいました。レンズですが、でかいですね。コンパクトなレチナが一気に大柄なカメラになってしまいます。それから、前群交換式ですから距離系には連動しなくなるため、いちいち距離を移し替えるのがちょっと煩雑に感じました。広角だったらちょっと絞ってパンフォーカスにした方が楽でしょうね、きっと。
戻る(検索エンジン等でご来場のかた用です。左にメニューがでている方はそちらをご利用ください)