レチナ レフレックス
このカメラはレチナに比べればそれほど人気がないと思う。特に日本ではあまり知名度がないような気がする。もっとも例によって私は日本の舶来カメラ事情に疎いので、私が良く知らなかっただけかもしれないが。
レチナレフレックスはレンズシャッターを備えた一眼レフである。一応一眼レフに分類されるが、普通のフォーカルプレーンシャッターを備えた一眼レフとは構造も、特徴もかなり異なっている。レチナフレックスの構造的はコンタフレックスなどと同じである。多くのレンズシャッター式の一眼レフはレンズの鏡筒内にレンズシャッターを納めている関係でレンズは前群交換式かフロントコンバージョンになる。この場合レンズの設計が大幅に制限されてしまうのは言うまでもないことである。レンズの後群のさらに後ろにシャッターを設けているカメラもあるがこれはビハインドシャッターでレンズシャッターとは呼ばない。レンズシャッター式の利点は絞りがボディ側にくっついているので自動絞りを含む絞り関係のコントロールが楽な点である。実際にコンタフレックスもレチナフレックスもボディと交換レンズの間にはレバーもボタンもピンもない。また、レンズシャッターカメラのノウハウを持っているメーカーにとっては、フォーカルプレーンシャッターより楽だったかもしれない。反面、シャッターがミラーの前にあるため撮影前はシャッターが開放していなければならず、シャッターボタンを押してからいったんレンズシャッターが閉じ、それから露光のためにシャッターが開閉するという、複雑な構造をとらなければならなくなる。また、シャッターを切ったあとはシャッターが閉じたままになり、実用上きわめて不便である。実際この複雑な構造とレンズ設計上の制約から、フォーカルプレーンシャッター式の一眼レフが発達してくるとレンズシャッター式の一眼レフは市場から消えて行くことになってしまった。つまり、コンタフレックスやレチナレフレックスはレンジファインダーカメラから一眼レフへ移行して行く過渡期に生まれて消えていったカメラと言える。
1957年発売のレチナレフレックスはレチナIIIC(大窓)とよく似ている。ニコンSPとニコンFの関係に似ている。軍艦部やボディはそっくりでレチナIIICの折り畳み機構の代わりにペンタプリズムを付けたような感じである。レンズもレチナIIICと同じ前群交換式、互換性がある。レチナレフレックスは1959年にレチナレフレックスS型に発展する。このS型は全群交換式のレンズを採用したためレチナIIICやレチナレフレックスとの互換性がなくなったが、レンズのラインナップは充実していった。結局レチナレフレックスは発展を続け1967年まで作られた。
私はレチナIIIC用のレンズを使うカメラとしてレチナレフレックスに注目していた。レチナIIICが気に入った私は、e−bay経由で35mmと80mmのレンズを落札した。撮影結果はすばらしかったのだが、距離計が連動しないためいったん距離を測ってから補正しなければならない。これはかなり面倒くさい手順だった。このカメラしか持っていなければなんとしてでもこれらの交換レンズを使うだろうが、とても一眼レフに太刀打ちできる代物ではない。だから一眼レフが普及したのであって、私自身が身をもって歴史を証明しても仕方がないのだが、ともかくレチナIIICは素の状態で使うべきであることを痛感して終わった。しかしレンズがもったいない。Xenonは素晴らしいレンズである。一眼レフのレチナレフレックスなら使いやすいかもしれない、と思ったのも当然である。
そう思って、デンバーカメラショーでレチナレフレックスと対面した。安くはなかった。本来なら買わない値段だった。しかし惚れてしまった。それはそれは美しいカメラなのだ。レチナIIICも美しいと思う。しかしレチナレフレックスはそれを上回る美しさだと思った。全体に小振りで、しかし、金属製のペンタプリズムがそびえ立っている。はっきりって古くさい、しかしそれはレトロな美しさである。このカメラを使っている人がいたら思わず声を掛けたくなる。そんな美しいカメラなのである。と言うわけで予算オーバーであったが、我慢できずに手に入れてしまった。
私はコンタフレックスのデザインも美しいと思う。コンタフレックスとレチナレフレックスには共通するテイストがあると思う。どうやら私はこのテイストに弱いらしい。
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