ミノルタ SRT−101
私がミノルタSRT−101のことを身近に知ったのは中学2年生のころである。当時仲の良かった友達がいきなり何の前触れもなく一眼レフカメラカメラを買った。それがSRT−101だった。年代で言えば1970年代後半、すでにAE−1が発売られていた。SRT−101は当然中古だった。彼はカメラや写真よりも天体が趣味で、カメラは天体写真を撮るための道具だった。新しい天体望遠鏡にほとんどすべての貯金を使い尽くし、余ったわずかなお金で買えるカメラということでSRT−101が選ばれたのだった。SRT−101が天体撮影の用途に向いているかどうかは今もってわからないが、当時の中学生というのはそんな感じだった。ともかく何であれ、一眼レフを手に入れただけでうらやましかったのを覚えている。ちなみに彼の持っていたレンズは中古カメラ屋の中で一番安かった135mm1本だった。彼が修学旅行にこの秘密兵器SRT−101に135mmレンズをつけて持ってきた。「男の中の男」と思った。当時は一眼レフを持っている中学生は少なかったので彼は行く先々で引っ張りだこだった。たださすがに記念写真は撮りずらそうだった。だって、友達を並ばせてから遙か彼方まで走って行くんですもの。
実は私がSRT−101を所有するのは二度目である。1998年、新宿の某カメラ屋さんのジャンクボックスの中から格安で救い出したのが最初の出会いだった。露出計不作動だったが2000円だった。迷う必要はない。底板を開けて見ると接点が腐食している。半田付けをやり直すだけですぐに復活した。
結果的に手放してしまったが、決して気に入らなかったわけではない。じつは、知り合いの息子さんに標準レンズ付であげてしまったのである。マニュアルの一眼レフカメラが欲しいといういまどき感心な中学生で、いたく感動した私は(酔った)勢いであげると約束してしまったのである。家に帰って手元にあるカメラの中を探して適当だと思ったのがSRT−101だった。この選択は正しかったと思う。マニュアルカメラで写真を撮りたいという若者に適度な負荷を与えるならこのクラスが最適である。しかしひとつ気になることもある。私はマニュアルカメラと言うことで当然「マニュアル露出のカメラ」とイメージしたのだが、もしかすると彼は「マニュアルフォーカスのカメラ」と言いたかったのかもしれない。それならSRT−101は過負荷である。しかし、まあ鉄は熱いうちに打てと言うではないか。青春にある程度の挫折は付き物である。
ミノルタSRT−101はTTL開放測光露出計内蔵の追針式マニュアル一眼レフである。発売は1966年。ミノルタは非常に早いタイミングで開放測光に対応したといえる。ミノルタは1958年の最初の一眼レフSR−2からずっとSRシリーズを発売していた。他の一眼レフメーカーと同様に外光露出計内蔵のSR−7を経て、TTL露出計内蔵のSRT−101の発売にこぎつけたわけである。このときレンズは開放測光に対応するためオートロッコールからMCロッコールになった。ライバルのアサヒペンタックスSPやキヤノンFTは絞り込み測光。ニコマートFTやトプコンREスーパーとともに開放測光陣営を形成し、絞込み測光vs開放測光の論争の主役を担ったカメラである。
私の個人的な考えだが、いまTTL露出計内蔵のマニュアル一眼レフをまともに使おうと思ったら、やはり開放測光の物を使うべきだろう。ペンタックスSPが悪いわけではないが、絞り込み測光はやはり不便だ。キヤノンならFTbからだと思う。SRT−101はミランダのように開放f値をマニュアルで設定するような面倒くさいこともないし、ニコマートFTより格安である。露出計は追針式で、今使っても何の違和感はない。SRT−101と言うのは良く考えられた、優れたカメラであったと思う。
実はAEが本格的に一眼レフに搭載される以前のTTL露出計内蔵一眼レフは開放測光さえ達成されていれば機能的な差はそれほどない。電子シャッターもまだほとんど普及していなかったから、機械式シャッターで1秒から1/1000秒、露出計は追針式か定点式、その他は細かな差でしかない。そうなるといち早く開放測光に対応したミノルタの先進性が光る。
それでは、SRT−101が爆発的に売れて、このクラスのトップになったかと言うとどうもそうではなさそうだ。1970年代初頭のアサヒカメラや日本カメラのフォトコンテストを見るとほとんどの作品がアサヒペンタックスSPで撮影されている。これはSRT−101が悪いわけではなく、おそらくそれ以前にペンタックスSマウントのレンズが普及していたのだろう。
SRシリーズはその後SRT−SUPER、SR101、505に発展し1970年代後半まで続く。最終的には新しいXシリーズに移って行くのだがが、初期の一眼レフを代表するシリーズであることは間違いないと思う。
さて、私が一度手放したSRT−101を再び買った理由であるが、55mmf1.7の標準レンズ込みで$35だったからである。つまり安かったからである。いつも同じ理由で申し訳ない。コロラドスプリングスで開かれるアンティークセールで発見したのだった。当初$50の値札がついていたのだが、手にとって見ていると店主が「$35でどう?」と誘ってくる。電池が切れているので露出計の動作はわからなかったが、比較的きれいなSRT−101が$35なら文句は全くない。家に帰ってから手持ちの電池を入れただけでは露出計は動かなかったが、接点を磨いたところ無事動き出した。めでたしめでたしである。
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