リコーXRソーラー

 このカメラは太陽電池で作動する露出計を内蔵した機械式35mmマニュアル一眼レフである。決め手はこの「太陽電池で動く」である。そういえば太陽電池で動く機械というのはいつから市場に登場したのだろう?私の記憶にあるもっとも古い太陽電池物は小学校の頃見た腕時計だったと思う。その後太陽電池は爆発的に普及するわけではないが、着実に我々の生活に浸透してきた。
現在太陽電池物の代表と言えるのはなんと言っても電卓である。おそらく特殊な関数電卓でもなければ太陽電池ではない電卓を探す方が難しいくらいではなかろうか。いまや、電卓と言えば太陽電池である。そしてもちろん一部の腕時計にも採用されている。さて他には、と探してはみたがあまり思いつかない。家庭用の太陽発電ソーラーシステムもあるが、やはり一般的な家電品に大々的に太陽電池が採用されているわけではなさそうだ。
 太陽電池の欠点はその設置面積の大きさとと不安定性、そして起電力の弱さであろう。設置面積と起電力はバーター関係にある。起電力を大きくしようとすればどうしても面積の大きな電池が必要になる。必要な広さの太陽電池パネルを機器の表面に敷き詰めることが出来なければ太陽電池を使うことは出来ない。それでも最近は随分小さくなってきてはいるのだが。不安定さというのは、要は太陽に当たっているときといないときの起電力の差である。これは太陽電池が太陽光で発電する以上仕方ない。時計などは光が当たっていないときでもきちんと動かなければならないため、充電式の電池を内蔵している。電卓は明かりがなければ使えない。明かりがなければと言っても電卓程度の電力なら蛍光灯で事足りるので十分実用になっている。液晶式でバックライトのついていない電卓を、まったく光のないところで使うことはほとんどないだろう。一度、ムード照明のちょっとおしゃれな高級レストランに行って食事をして、帰りに割り勘の計算をするためにソーラー電卓を使おうとして使えなかったことがあるがこれは例外と言っていいだろう。

 リコーXRソーラーは基本的には機械式のカメラである。したがって電気がなくてもカメラとしては問題なく動く。ただ、露出計が働かないだけである。このカメラが発売されたのが1990年代半ばであったが、それでもやはりAEカメラのすべての電力を安定して太陽電池から供給することは困難だったのであろう。機械式にして電池を露出計だけにしたリコーの割り切りはすばらしいと思う。おかげでAEにこだわった先代のXR−sより遙かに完成度の高いカメラになった。

 さて、太陽電池であることに利点であるが「電池切れの心配がまったくない」というくらいであろう。実は今の日本では太陽電池であることにメリットはそれほど大きくはなかったりする。よほど特殊な電池を使っていれば別だが、そうでもなければカメラ用の電池くらいならどこに行っても手に入る。山に登ったり人里離れた秘境に入ったりするなら話は別かもしれないが、XRソーラーをそんなところにもって行く人はそれほど多くはないだろう。
本で得た情報だが、リコーは電池の手に入りにくい国や地方で使われることを考えてこのカメラを作ったと言う話である。今でも場所によっては電池が手に入りにくい国というのはあるだろう。日本に住んでいる限りは問題ないが、ひとたび海外に行くと日本では普通に手に入った物が案外見つからないことがある。やはり日本の常識は必ずしも世界の常識ではないのだ。やはりXRソーラーは良いカメラだと思う。

ところで、リコーXRソーラーはコシナのOEMらしい。キヤノンT60やニコンFE20などの兄弟に当たるのだろう。そうなると、この太陽電池はリコーのアイデアでそれをもとにコシナがカメラを作ったのだろうか?私はこのあたりのことは詳しくないのでよくわからないのだが、OEMというのは不思議なシステムだと思う。OEM先を明らかにするのは、品のないことなのだろうか?

 さて、XRソーラーであるが、作り自体はそれほど高級そうには見えない。見るからに全身プラスチックだしシボ皮ではなくゴム張りである。シャッターのショックも大きめだ。しかし、XRソーラーは実際に安いのだからこれはこれでよいと思う。シャッター速度は1秒〜1/2000秒まであるし、シンクロも1/125秒でなかなかよい。1970年代なら高級機に類されたかもしれない。ワンタッチで使えるプレビューボタンはこのカメラのポイントである。露出計は液晶表示で+○−の表示しかない。暗くなれば見にくいし、+○−だけではどれくらいずれているかが全然わからなくってちょっと使いにくい。太陽電池という限られた電力で動いている露出計なので多くを期待してはいけないのだが、もう少し見やすい、使いやすい露出計にして欲しかった。
 XRソーラーはもちろんメインに据えて使うようなカメラではないと思うが、ちょっと気になるカメラである。そしておそらくこの手のカメラが再び登場することはないだろう。日本製のカメラはどんどん多機能になって電力を喰うようになっている。しかし、そういったカメラの進歩の方向へのアンチテーゼとして、価値のあるカメラだと思う。それほど高くなければ手に入れても良いカメラだと思う。



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