マミヤ ZE−X


このカメラはアメリカで購入した。現役の時はA−1よりも少し後に発売された。ZE−Xは日本の中古市場でも滅多に見かけないカメラである。はっきり言ってレアなカメラだろうと思う。しかしレアだからと言って希少価値があって値段が高いかというとそんなことはなく、ちょっと高めの中古カメラと言う感じで落ち着いている。ただ、ほとんど見かけないカメラだから、店の方で「希少!」とか「珍品!」なんてセリフをプライスタグに書いてあるところでは、ひょっとすると勝手に高値をつけているかも知れない。そんなカメラだが、私は高校時代このカメラが気になって気になって仕方がなかった。コンセプトがA−1に似ているからである。(当時はそう思っていた)。そして随所にA−1を研究しつくし、A−1を上回る機能が付いている(ような気がした)のだ。とあるカメラ情報を扱った単行本でべた褒めだったのも、私を不安にする原因のひとつだった。私はその当時から今に至るまでカメラ関係の単行本やムックをこよなく愛している。さすがに最近は単なる読み物として読んでおり、書いてある内容はほとんど参考にもしないのだが、当時はバイブルのように扱っていたので、カメラの評判には一喜一憂していたのだ。ZE−Xって本当にそんなにいいカメラなのだろうか?

ところで、メーカーのマミヤだが、このZE−Xを最後に一眼レフからは撤退する。その後一時経営が怪しくなり存続の危機も噂されたのだが、釣り具メーカーのオリムピックと合併し、マミヤOPとして中判カメラの方で現在も生き残っている。私は一時、カメラで行き詰まったマミヤが苦し紛れに釣り具を作っているのかと思っていた。マミヤはZEシリーズ以前からしょっちゅうマウントを変更することで有名なメーカーだった。それだけで一覧表が出来るくらいである。新しい機能が必要になれば今までのマウントを潔く捨て、新しいマウントを作るののだからたまらない。たしか1959年以降25年間で5種類、細かい連動機能の違いを含めると7種類のマウントを作っているはずだ。M42や内爪エキザクタマウントの頃もあったから、本当にマウントのデパート状態である。かなわないのはユーザーで、せっかくそろえたレンズがあっと言う間に時代遅れになるのですからたまったものではない。ただ、ペンタックスがスクリューマウントからKマウントにかえたときのような大騒ぎにならなかったところを見ると、ユーザーの数自体がそれほど多くなかったのかもしれない。最後のZEマウントは先進のエレクトロマウント(ミラクルマウント)だった。絞り連動用のレバー以外はピンやレバーは一切なく、そのかわりに電気接点がずらっと並んでいた。その中には将来の発展のための予備信号接点もあったのだが、発展どころかシステム自体が消滅してしまい、結局予備のままその運命を終えてしまった。何とも笑えない話である。予備信号ピンといえばFDシリーズにも予備信号ピンがあったが、あれいったいどうなったのだろう?ひょっとしてあれも予備のまま天寿を全うしたのだろか?

さて、カメラの方だが、一見して安っぽい。プラスチック丸出しで趣もへったくれもない。プラスチックの上を何層にも分けて塗装しているAシリーズとはえらい違いである。ファインダー内の表示はA−1そっくりの7セグメントLEDデジタル(赤色)でA−1に慣れた私でも違和感なく使える(これって良いことなんだろうか?)。さらに露出補正をファインダー内で警告してくれるのは大変便利である。

ZE−Xの売りは、クロスオーバーシステムである。ミノルタXDのサイバネーションシステムを進化させたもので、絞り優先でもシャッター速度優先でも、設定した値で適正露出を得られない場合は自動的に設定値の方が変化して、適正露出が得られるようになっている。さらに必要に応じてこのシステムはオフにすることも出来る。これは結構ポイントの高いところで、設定値を変えたくない場合というのもないわけではない。XDのシャッター速度優先はサイバネーションシステムを殺すことが出来ない。この仕掛けは便利だがお節介なシステムなので、好みに応じてカットできるのはユーザー思いといえるだろう。そしてプログラムAEである。プログラムAEはごく普通の(マルチプログラムではない)プログラムだが、このプログラムAE、シャッター速度が1/30秒以下になるまではファインダー内に絞りもシャッター速度も表示されない。さらに1/30秒以下になってもシャッター速度しか表示されない。思わず「どうして?」と抗議したくなるような仕様である。A−1と同じ7セグメントのデジタルが付いているんだから、表示を出さない理由はないと思うのだが、どうだろう。

操作自体は簡単で優秀だと思う。なぜならZE−Xにはモードセレクタが存在しないのである。レンズの絞りリングだけをAに合わせればシャッター速度優先、シャッターダイヤルをAに合わせれば絞り優先、両方ともAにすればプログラムAEになる。これ以上簡単な方法はたぶんないだろう。よく考えられた操作性だ。ZE−XのマルチモードAE機能はきわめて優秀で完成度が高いと思う。おそらくマルチモードAE機としてのスペックなら、A−1もXDもかなわないだろう。

ちなみにワインダーもついてきた。この手のアクセサリーはあとから探すのは大変だから、ついてきたのはラッキーだった。ただ、このワインダー、信じられないくらいうるさい。ひょっとして油切れを起こしているのではないだろうかというような大音響がする。静かな場所ではなくても思わずスイッチを切りたくなるくらいの音が響き渡る。これ、故障なのだろうか?それともこんなものなのだろうか?

マミヤZE−XはXD、A−1に次ぐ3番目のマルチモードAE機として登場した。そしてその次がフジカのAX−5だった。皮肉なことにフジカもAXシリーズを最後に一眼レフから撤退してしまうことになる。一眼レフメーカーが淘汰されていた時代だったのだ。ほかにも、この時期にトプコン、コニカが一眼レフから撤退していった。これらの会社はミランダやペトリとは違い、倒産はしないで方向変換し今でも健在である。ZE−Xは一眼レフメーカーマミヤの最後の挑戦だった。結果は芳しくなかったが、電子マウントは他のメーカーに受け継がれ現在にも生きている。







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