究極の一眼レフか過渡期の製品か

 キヤノンAE−1プログラムはキヤノン得意のシャッター速度優先AEにプログラムAEを付加したカメラです。プログラムAEを含めたマルチモードAEを達成していたA−1に比べればグレードダウンと言えるかもしれません。しかし、発売から20年たった今でもAE−1プログラムには根強い人気があります。このホームページを訪問してくださる方々の中にもAE−1プログラムをメインに使っていらっしゃる方が少なくありません。おそらくAE−1プログラムの使いやすさが最大の理由でしょう。私は初めての一眼レフがA−1ですから全く違和感がなかったのですが、そうでない方にとってA−1のモードセレクタというのは馴染みがないものだったようです。慣れてしまえばなんと言うことはないのですが、確かにモードセレクタの操作というのはそれまでのカメラと比較して余計な操作です。ところがシングルモードのAE+プログラムと言う組み合わせであれば複雑なモードセレクターは必要なくなります。実はこのコンセプトで作られたカメラは少なくありません。

 キヤノンがAE−1プログラムを発売した時期に少なくとも同じようなコンセプト(シングルモードAE+プログラムAE)の一眼レフが各社から発売されていました。ペンタックスプログラムA、オリンパスOM−2SP、OM−40、ミノルタX−700、ニコンFGなどはその例です。プログラムAEの搭載が可能になったと言うことは、ボディとレンズ間の情報交換とボディからの絞りの制御が可能になったと言うことであり、これは、マルチモードAEが可能になったと言うことにほかなりません。しかし、各メーカーは「何が何でもマルチモード」と言う姿勢はとらずにシングルモードAE+プログラムという機種を発売しています。とくに、ミノルタはキヤノンと同様、両優先の一眼レフXDを発売したあとで、X−700を発売しています。これは実におもしろい傾向です。

 もちろん最大の理由はコストだと思います。マルチモード機のA−1がボディ¥83,000、AE−1プログラムが¥60,000ですからその差¥23,000は決して小さな数字ではありません。それぞれのメーカーの普及機にプログラム機能を付加したと言うのがそもそものコンセプトかもしれません。

 ただ以前も書きましたが、私はA−1をメインで使っていますが、よく使うのはシャッター速度優先AEとプログラムAEです。絞り優先AEを使うのは、たとえば「明るさが不十分で少しでも早いシャッターを切りたいときに、絞りを開放付近に合わせて撮る」と言う、限りなくシャッター速度優先に近い使い方です。それ以外の場面で絞り優先を使うことはほとんどありません。絞りをコントロールしたい場合もシャッター速度でコントロールしてしまいます。これは習慣の問題でしょう。絞り優先に慣れた人なら、シャッター速度を絞りでコントロールするはずです。おそらくキヤノンユーザーなら多くの人がシャッター優先AE派だと思います。そうなると、シングルモードAE+プログラムAEというのはなかなか的を射た組み合わせと言えるかもしれません。私はAE−1プログラムのファインダー情報にシャッター速度情報がないのが不満でA−1から離れられないのですが、A−1から絞り優先AEがなくなっても特に困らないでしょう。もちろん絞り優先AEがあって困ることはありませんし、全く使わないわけでもありません。ただ、自分にもっとも合った究極のカメラと言うことになると、もしかするとAE−1プログラムにA−1のファインダー情報を付加したものかもしれません。

 ミノルタXDが発売になるまでは、一眼レフはマニュアルかシングルモードのAEでした。この時代は、シャッター速度優先AEが好きな人はシャッター速度AE機を、絞り優先AEが好きな人は絞り優先AE機を買っていたはずです。マルチモードAEが可能になり、シャッター速度優先AEか絞り優先AEかと言う議論は終わりましたが、しかしやはり好みというものは今に至るまで存在していると思います。

 今のカメラは基本がマルチモードです。今ならシャッター速度優先AE機を作るのも、マルチモードAE機を作るのもコスト的には大差ないでしょう。各社の初級機ですら判で押したようにマルチモードAEです。そう考えるとシングルモードAE+プログラムAEというのはマルチモードAEが一般化するまでの過渡期の製品なのかもしれません。しかし、これはあくまで私の意見ですが、ユーザーの要求に特化した無駄のない、もっとも使いやすいAE一眼レフというのはシングルモードAEかシングルモードAE+プログラムAEあたりではないでしょうか?90年代は時代の要求もあり各メーカーとも多機能への道へ一直線だったわけで、また消費者も単機能よりは多機能を好んだために今の状況があるわけですが、今の時代だからこそ、自分の好みにぴったり合っていて余計な機能のない、カスタムメイドのようなカメラというのは究極の贅沢かもしれません。

 最近のカメラはマニュアルを見ながらでなければ使えない、買ってから一回も使ったことのない機能がたくさんある、と言う話は良く聞きます。幸いキヤノンAシリーズなら好みに合わせて、カメラを選ぶことができます。何でも付いてる十徳ナイフより、切れ味の良い単機能ナイフの方が、実際には役に立つものです。





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