絞り優先AEの利点


 キヤノン党の私は当然ながらシャッター速度優先AE派です。これはもう慣れの問題だと思うのですが、キヤノンは伝統的にシャッター速度優先AEのカメラを好んで発売してきました。キヤノンとしては「なじみのない絞り値(f/NO)よりも、時間であるシャッタースピード値の方がユーザーにとってはわかりやすい」と言う信念があったのだそうです。

 AE−1発売まではAE一眼レフはほとんどが絞り優先AEでした。シャッター速度優先AEにこだわっていたのはキヤノンとコニカくらいのものだったでしょう。ではキヤノンとコニカ以外のメーカーが絞り優先にこだわっていたのかというと、それはやや疑問です。というのは1970年代の技術であればシャッター速度優先AEより絞り優先AEの方が作りやすかったのです。初の絞り優先AE一眼レフは、確かアサヒペンタックスESでよかったと思います。ESはSシリーズで初めて電子シャッターを採用したカメラでした。電子シャッターはシャッターの開閉時間を電気的な量でコントロールします。と言うことは電気で動くTTL露出計の値をそのままコンデンサにためて、電子シャッターをコントロールさせれば比較的簡単にAEシステムを作ることができます。問題になるのは一眼レフはレンズの交換が売りですので、レンズを交換したときの開放F値の変化をどうやってカメラに伝えるかと、絞りリングで選択している絞り値をどうやってカメラに伝えるかでした。これらの問題はレンズにピンやレバーを付けカメラに伝達することで解決しました。

 これに対してシャッター速度優先AEはちょっと状況が複雑でした。シャッター速度をはじめに選びますからシャッターが電子式であっても機械式であっても大きな違いはありません。シャッター速度を決めてTTL露出計で露出を測れば対応する絞り値が得られます。しかし、これは電気的な量でこれをそのまま使って絞りをコントロールすることはできません。適正絞りまで物理的に絞らなければならないのです。これはかなり面倒で、マイクロコンピューターを使っていないキヤノンEFの場合はメーターの針の位置を機械的に読みとって、機械的に絞りをコントロールしています。シャッターをチャージするときに、絞り込みのための起動力もチャージしておき、シャッターリリーズと同時に絞り込みを始めます。TTL露出計のメーターの針の位置によってどこまで絞り込むかを判断し、必要量絞り込まれた段階で絞り込みを止め、その後シャッターが開き始めるという複雑なシークエンスと微妙なコントロールが必要になるのです。これは容易なことではなく、多くのメーカーが絞り優先AEを選んだもの理解できる気がします。

 さて、それではキヤノンが信念として持っていた「なじみのない絞り値(f/NO)よりも、時間であるシャッタースピード値の方がユーザーにとってはわかりやすい」というのはどうでしょう?その当時一眼レフを買うユーザーが絞り値に馴染みがないとは思えませんが、確かにf5.6とf8のぼけ味の違いを正確に勘案して写真を撮るというのはちょっと難しいと思います。もちろんf2.8とf16では大きく違ってきますが、私程度のユーザーであれば、作画意図に合わせて絞りを一段一段細かくコントロールするのはちょっと難しいです。それに対してシャッタースピードの方はコンロトールが楽と言えば楽です。使っているレンズによって手ぶれが起きやすい速度の基準というのもありますし、撮影対象の動きによって比較的自信を持ってシャッター速度を決定できるような気がします。

AV−1のファインダー
AE−1のファインダー

 それでは無条件にシャッター優先AEがいいかというと、どうもそう簡単ではなさそうです。あくまでこれは私の印象ですので、つっこみ無用でお願いしたいのですが...ファインダーの表示を見て状況を判断しやすいのは絞り優先の方です。もちろん例外はたくさんあります。デジタル表示のA−1はこの例には当てはまりません。シャッター速度がファインダー内に表示されるEFもOKです。AE−1とAV−1を比較した場合ファインダーを覗いてシャッター速度がわかるのはAV−1の方です。そしてシャッターを切る直前まで確認できるのはファインダー内の情報です。これはあくまでファインダーを覗いたときの話で、それ以前に自信を持ってシャッター速度を設定しているわけですから、実際には大きな問題ではないのですが、好き嫌いを言えばファインダー内に針式のメーターがある場合は、シャッター速度が並んでいる方がなぜか安心感を感じます。それでもAV−1よりAE−1を持ち出すことの方が圧倒的に多いですから、やはり私にとってはシャッター優先AEの方が使いやすいのでしょう、きっと。



















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