キヤノン T−70 US.NAVY

 このカメラはe-bayで落札した。私はAシリーズには萌え萌えだが、Tシリーズはそうでもない。T−90は「いいな」と思うが、T−50、T−70、T−80は特に欲しいとは思わなかった。しかし、このT−70だけは思わず落札してしまった。


 もちろんUS.NAVYの刻印があったことが最大の理由だが、じつはそれだけではない。値段はそれ程安くはなかった。実はこのカメラ明らかに特殊な用途に使われていたカメラなのである。

 ボディは普通のT−70にNAVYの刻印が入っただけである。問題はレンズ。付いてきたレンズはNewFD100mmf2.8。これ自体は別になんと言うことはない。実は私も持っている。ところがこのレンズ絞りリングがない。絞りリングに該当する位置にリングはあるのだが絞り値は一切なく、通常のFDレンズではAマーク位置に当たる場所で固定されている。つまり絞りリングはオートで固定されていて動かない。しかし、別にこれは大した問題ではない。T−70で使う限りはAマーク位置に固定した方が間違いがなくていいくらいである。
 ところがもう一点、普通のNewFD100mmf2.8と決定的に違う点があった。なんとこのレンズ、ピントリングが動かない。無限遠に固定されている。Aマークはともかく、この仕様では使いづらくてたまったのもではない。いったい何のためにこのような改造レンズを作ったのだろうか?

 実は私ははじめから答えがわかっていた。わかっていたから買ったのである。このカメラは恐らく航空機識別用のカメラである。国籍不明機が航空母艦に近づいたときなどに、スクランブルで飛んでいった作戦用航空機が国籍不明機の証拠写真を残すために使用されるカメラだと思われる。飛行機から飛行機を撮るわけだから距離が無限遠以外になることはありえない。飛行機を操縦しながら、あるいはレーダーを操作しながら余力で写真撮影をするため、あまり焦点距離の大きな望遠レンズでは使いにくい。100mm程度で撮影し必要に応じてトリミングすれば済む。冷戦の頃の航空機年鑑を見ると明らかに、こうした場面で撮影されたであろう東側の飛行機の写真が載っている。

 はじめにのところで、「軍用カメラと言っても必ずしも厳しい状況で使われたものとは限らない」と書いたが、このカメラはちゃんと海軍の飛行機に搭載されたカメラのようだ。それなら「ちょっとくらい高くてもいい」とおもったのが最終的に落札した動機である。(実際はすごく高いわけでもない。日本なら恐らく相場通りだと思う)。

 一応念のため、友達で海軍の対潜攻撃機S3バイキングのパイロットをやっている少佐にこのカメラを見せてみた。S3にはカメラは積んでいないそうだが、恐らく戦闘機用の識別カメラだろうと言う話だった。やったー。彼はこのカメラがe-bayにでていると知ってそれはそれは驚いていた。

 ちなみに、日本の航空自衛隊の識別カメラは90年代半ばまでオリンパスOM−2Nだった。現在はニコンと言う話である。








戻る(検索エンジン等でご来場のかた用です。左にメニューがでている方はそちらをご利用ください)