キヤノンEF

A−1を置き引きに取られてしまった私は、何がしかの弁償金でキヤノンEFを購入したのだった。置き引かれた先輩は痛く申し訳ながっていたのだが、置き引かれたA−1は購入後5年近く経過しており、いまさら新品の値段をいただくわけにもいかず、適当な金額で手を売ったのだった。まあ、ちょっと足してまたA−1を買ってもよかったのだが、思うところあって中古でEFを買ってみることにした。明らかに先祖帰りなのだが、私はEFのハイブリッドシャッターにちょっとした魅力を感じていたのだった。

EFのハイブリッドシャッターは実によく出来ている。ハイブリッドシャッター搭載を謳ったカメラはいくつかあるが、キヤノンEFほど完璧なハイブリッドシャッターは見当たらない。たいていのカメラのハイブリッドシャッターは1/60秒くらいまでがメカでそれより遅いシャッター速度は電子式である。しかしながらEFは、1/1000秒から1/2秒までメカニカルシャッターである。メカニカルシャッターは、1/30秒以下のシャッター速度はスローガバナーをかませる必要があり、作るのが大変で精度を出すのも難しい。1/60秒以上のシャッター速度だけなら、かなり楽に実現できる。キヤノンニューF−1もペンタックスLXも、この類である。私の知る限りEFほど低速側までメカで実現したハイブリッドシャッターはない。私はこのいかしたハイブリッドシャッターに魅せられてしまった。実は私がハイブリッドにこだわった背景にはA−1の影があった。A−1を愛用していた頃に常に気にしていた「電池消費」の問題である。私が使っていたA−1シリアル604012機はそれほど電池消費の過大なカメラではなかったと思うが、長時間露出やバルブでの撮影ははっきり言って躊躇していた。EFは電池がなくてもとりあえず動く。A−1で苦しんだ私には、それがたいそう大きな魅力に見えたのだ。

 EFは、言わずとも知れたキヤノン初のシャッター優先AE一眼レフであり、メーカーの気合を感じる高い完成度である。シャッター速度と絞りの両方がファインダー内で確認できる情報集中ファインダーは他のメーカーにはあまり見られない優れた特徴だった。私にとってこの情報集中ファインダーは大切な機能である。とりあえず、A−1からの移行は違和感もなく行われた。どうやら私にはA−1の絞り優先AEはほとんど必要なかったようだ。

 A−1を買うことが出来なかったくらいなので、付属品類はサードパーティのオンパレードになった。望遠系ズームはタムロン、ストロボはサンパックである。おそらくこの時点で私は純正至上主義を捨てたのだろう。