キヤノンNewA−1
Canon COMPENDIUM -Handbook of tha Canon System Bob Shell より |
かなり前の話ですが、私はどこかの掲示板で「A−1にはNewA−1と呼ぶべき後継機の計画があり、どうやらプロトタイプまでできていたらしい」と言う話を耳にしました。どこの掲示板だったかはちょっと思い出せません。お世話になっているF−1/A−1だったような気もします。
A−1は人気機種でしたしAシリーズの最上級機種でしたから、後継機を検討するのは当然でしょう。おそらくA−1が発売されてからしばらくして、ポストA−1が検討され始めたものと思います。どんな機種だったのか、ものすごく興味がありました。A−1の欠点をことごとく改良したマイナーチェンジバージョンだったのでしょうか(パターンとしてはF−1→F−1n)、それとも全く別なカメラだったのでしょうか(F−1→NewF−1)。
ところがなんと、このプロトタイプの写真を手に入れることができました。英語ですが「Canon COMPEDIUM -Handbook of the Canon System-」と言う本に載っていたのです。それがこの写真です。この本はデンバーカメラショーの帰りに寄ったカメラ屋さんで売っていました。初めて見る本でした。キヤノンの全システムについてですので1/4がレンジファインダー、1/4がマニュアルフォーカス、半分がオートフォーカスと言う構成の本です。しかし、その中にプロトタイプばかりを集めた章があり、A−1の後継機の写真があったのです。
本によるとこれは1981年に作られたプロトタイプだそうです。A−1の面影は強く残っていますね。グリップ辺りのデザインもそんなに変わっていません。ただ、グリップの材質はTシリーズのものに近いような気がします。よく見ると所々にTシリーズの面影が見えます。たとえばホットシューのあしらい方はTシリーズに似ています。巻き戻しレバーはAE−1プログラムのものでしょうか?A−1のものとは違います。ATダイヤルやモードセレクター、シャッターボタンと言った右手で操作する部分はそのままです。露出ロック、露出読み取りボタンもだいたい同じです。ただ、微妙に違う部分もあるのでそのままの機能かどうかはわかりませんね。露出読み取りボタンが巨大化しているような気がします。気になるのはA−1の露出表示スイッチの辺りが大幅に改良されています。ここにどんな機能を盛り込もうとしていたのでしょうか?しかしこのデザインを見る限り、全く別な機種と言うよりはA−1のコンセプトを受け継いだ改良型というような気がします。
1980年頃の技術を導入してA−1に対し改善可能であった点を考えてみましょう。
1.フォーカシングスクリーンのユーザーレベルでの交換
スクリーンを見ると切り欠きがありますから、AE−1プログラムと同じようなスクリーンの交換は可能なようです。
2.中央部重点測光とスポット測光への切り替え
これはわかりません。出来ることを祈りましょう。
3.ストロボのダイレクト測光への対応
この写真を見る限りは、ホットシューの接点はA−1と同じ様ですから、無理かもしれません。
4.最高速シャッター速度の向上(1/2000秒まで)
希望としてはぜひかなえて欲しいところですが、Aシリーズ共通のシャッター(横走布幕)では難しいかもしれません。
5.電池消費への対応(省電力設計)
これもわかりませんが、何らかの対応はとられていることでしょう。
ところでこのプロトタイプをよく見るとおもしろいことがわかります。マウント部の左内側を見てください。明らかに電気接点が見えます。ちょうどFDレンズの予備信号ピンのあるあたりです。予備信号ピンを使おうとしたのか、それともFDエレクトロマウントの計画があったのか、今となってはわかりません。ただ、電気信号ピンがあるわけですから予備信号ピンと言うよりは、FDレンズに改良を加えて新たな機能を付加しようとした可能性を強く感じます。この時期に電気接点を利用しなければならないものと言ったら何があるでしょう。あくまで想像の域を出ませんが、1981年と言えば当然AL−1(1982年3月発売)の計画が進んでいた時期です。NewA−1には電気接点を使ったオートフォーカスの計画があったのでしょうか?
しかし結局NewA−1は発売されることなく姿を消しました。理由はもちろんわかりません。本によると、「キヤノンはすでにTシリーズを発売しており、結局このプロトタイプが発売されることはなかった」と書いてありました。しかし、最初のTシリーズ、T−50の発売が1983年3月ですからちょっと当てはまりませんね。しかしキヤノンの開発態勢がTシリーズにシフトしていたのは本当かもしれません。ただ、本当のA−1の後継機といえるT−90は1986年ですから、NewA−1の発売があっても良かったのに、と私は思います。
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