(2)電子式のシャッター

電子式のシャッターは何もキヤノンAシリーズだけの目玉商品ではありません。ヤシカエレクトロだって、アサヒペンタックスESだって電子シャッターです。問題なのはメカニカルシャッターが一切ない、という点です。A−1対XDの論争が激しかった頃、よくこの点を突かれました。痛かったですね。「万が一電池がなくなったらただの箱」。反論のしようがなかったです。この当時の一眼レフは判で押したように「万が一のためのメカシャッター」が用意されていました。だいたいX接点のシャッタースピードに合わせていましたので1/60から1/125秒とバルブのメカシャッターがついていました。Aシリーズのカメラはメカシャッターがついていませんので、バルブの時も電磁石でシャッターを保持しています。これはずっと電気が流れ続けていることを意味しますので、当然電池は消耗します。Aシリーズのカメラは6Vの酸化銀電池を使用しますが、高校時代この銀電池が高騰しまして、最終的に1本2,800円というLPレコードと同じ値段になってしまいました。高校生の懐には厳しい値段です。当時の私はこれをAシリーズの欠陥と思い、嘆き悲しみました。

しかし、これも今にして思えばたいしたことではありません。電池なんて予備を持てばいいわけですし、実際電池が切れで「ただの箱」になった経験は一度もありません。アルカリ電池、リチウム電池の普及も追い風になりました。そもそも一般のユーザーであれば、30秒もの長時間露出やバルブによる撮影はめったにやりません。天体を主な被写体にされる方は、残念ながらAシリーズは向かないかもしれません。しかしこれは特殊な例で、普通用途ならメカ無しの電子シャッターでもなんら問題ありません。何よりその後のカメラがオール電子シャッターの道を歩んだことが何よりの証拠になるでしょう。

昨今のカメラブームの主役はメカニカルシャッターです。「きちんと手入れすれば半永久的に使える」と言う御意見をよく聞きます。これはおそらく正しいでしょう。ただ、万が一ギヤの摩耗で壊れた場合、それを直す費用は半端ではないでしょう。最悪の場合、部品を作ってでも直せるのはメカニカルシャッターの強みです。ただ実際にそれが出来るのは一部の人でしょう。そしてギヤは使っていれば必ず摩耗します。電子シャッターの回路は壊れればたいてい修理不能です。Aシリーズの電気的な故障はメーカーでも修理不能です。ただ、電子回路は使っていても摩耗はしません。また電子シャッターの場合は経年変化で、シャッター速度にムラが出る可能性は極めて低いです。メカシャッターと電子シャッターの勝負は引き分けだと思います。「スローガバナーの作動する“ジー”と言う音がたまらない。」と言う意見もあります。これは感覚的な意見なので反論のしようがありません。「好きなものは好き」と言う感情を理論で説得するのは無理です。特定の宗教の信者の方に他の宗教を勧めてもたいていは無駄であるのと同じです。

ここは「電子シャッターでもなんら問題はないよ」と言うのにとどめておきましょう。


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