アメリカカメラ事情 その4 安物買いの...

もう言わなくても皆さんわかっていらっしゃるとは思いますが、私は安いものが大好きです。では、安ければなんでもいいのか?と言われると、実はそのとおりなんです。まあ、「写るんです」ではちょっと不満ですが、実際「写るんです」クラスのカメラもたくさん持っています。フィルムの交換が出来て固定焦点、総プラスチック、ストロボ付きというやつです。フリーマーケットやリサイクルショップに行けば300円くらいから売って、つい手が出てしまうんです。ただ、確かに安いものは好きなのですが、私はバリバリの理系で経済学の勉強をほとんどしていませんので、コスト管理というのか、そう言う経済的な観念がほとんど身についていません。どういういうことかというと、例えばヨドバシカメラに1550円でアグファの5本入りフィルムが売っていたとします。すごく安いのですが、しかし私はこう思います。「確かフジヤカメラでは1510円だった。」そこで私は40円安いフィルムを買うために往復320円の電車賃をかけて中野まで行ってしまうのです。どう考えたって合理的ではありません。はっきり言って「アホ」です。ただ、私は安いものを目指してそういう行動をよくとるのです。つまり私の頭の中では「フィルム代」と「交通費」は別に勘定されていて、総合的にコストを判断できていないのです。どこかの国の硬直化した予算を見ているようで情けなくなります。ところがこんな私がニュースを見て、「族議員の既得権を守る、硬直した予算配分はけしからん」とほざいているのですから世の中平和です。ちなみに、フジヤカメラへの浪費の旅にストップをかけるのが時間です。私は経済観念はないのですが、時間観念には厳しいものを持っており、「定時定点必達」を信条にしています。「時間がないから仕方ない、ヨドバシで40円高いフィルムを買おう」と言うことになれば、結果的には280円得しているのですから万々歳です。
 アメリカには、そんな私を誘惑するシステムが用意されています。メールインリベートっていうんですが、日本でも時々ありますよね。日本ではマネーバックとかキャッシュバックって呼んでいたと思います。要はキャンペーン期間中になにか物を買って、レシートと製品についているバーコードを送れば、何がしかのお金が返ってくるというシステムです。たしかマイクロソフトのオフィスシリーズでこの制度があったように記憶しています。この制度、アメリカでは盛んです。週末のチラシにはたくさんのメールインリベートが載っています。そこで私のハートをバイブレートするのがメールインリベート・フリーの文字です。信じられますか?$20の物を買ってメールインリベートが$20です。私が払うのは6.1%の税金だけ。私は毎週末、サルのようにメールインリベート・フリーの文字を探しました。ただ、最近わかったのですが、メールインリベートでフリーになるのはだいたい決まった商品です。CD-Rのメディアは最もポピュラーなのですが、おかげで私は今、毎日1枚ずつ焼いても全部使い終わるのに2年はかかる量のCD-Rを抱えています。来年の夏には日本に帰るというのに。
 つい話が全然カメラと関係のない方法に行ってしまいました。メールインリベートは別にしても、アメリカには安い商品がたくさんあります。もちろん質もそれなりなのですが。私はアメリカに来て新品の三脚を買いました。ただ、日本に帰ればスリックの三脚があります。例によって三脚は荷物になるので持ってこなかったのです。しかしファミリーカメラマンの私にとって、セルフタイマーによる記念撮影は大切なミッションですので、アメリカに来てすぐ三脚必要になりました。「こんなことなら持ってくればよかった」と後悔しそうになりましたが、「輸送費よりも安く買えばいい」ということで気を取り直しました。安い三脚は意外なほど簡単に見つかりました。いつも同時プリントを頼んでいるWalMart(アメリカ中どこにでもあるスーパー)のプリントコーナーに$19.99の激安三脚が売っていたのです。メーカーはVivitar。一応エレベーターもついている、見た目ちゃんとした三脚です。値段に魅せられて即購入しました。脚はアルミですが、雲台やパーン棒、ハンドルはすべてプラスチックです。ヘビーデューティな用途には向いていないみたいですが、雲台の横には水準器までついており一見本格的です。うれしくなって早速使ってみました。カメラの着脱もスピーディで、良い感じです。ファインダーを覗いて見るとちょっと左ロール方向に傾いています。水準器は水平をさしていますのでパーン棒でコントロールすればOKです。と・こ・ろ・が、合わないんですよ、これが。パーン棒で右いっぱいに傾けても、なお左に少しロールしたままなんです。雲台にあるあらゆるネジを緩めてもだめなんです。結局雲台の作りが悪くてどうしようもないんです。仕方がないので脚の長さを調整して、何とかまっすぐになりました。しかしそうなると当然、水準器は意味をなしません。三輪車にスピードメーターがついているようなものです。そもそも安定性を大幅に犠牲にしますので、三脚本来の目的にも反します。まあ、使えないことはないので使っていますが、なんとも情けない三脚です。

 ある日私の使っていたストロボが不調になりました。キヤノンの専用ストロボではなく、サンパックの20SRと言う汎用オートストロボです。シンクロコードがついていたので古いカメラを使うときに重宝していました。まあ、なくても問題はなかったのですが、例のプリントコーナーに$14.99のストロボが売っていましたので、買ってきました。今度のストロボはバウンス機能が付いています。前のストロボより本格的です。メーカーはVivitar。一抹の不安は感じたのですが、値段に負けました。光らなかったら返金と思ってテストすると意外や意外、よく光ります。これは成功でした。いい買い物です。

 ただですね、たいしたことではないのですが、このストロボ、シンクロコードのソケットがよく抜けるんです。これはあとから気づいたのですが、どうも、ストロボとコードのコネクターが甘いらしく、スッポンスッポン抜けるんです。毎回撮影の前にコネクターを確認しなければならないくらいです。ホットシューの方は問題なんですが、そもそもシンクロコードがあるから買ったようなストロボですからこれでは意味がありません。まあ、元々の値段が値段ですし、返金を求めるほどの不具合ではないので我慢して使っていますが、日本製の高品質になれた身体にはなんともフラストレーションが残る買い物でした。

 そのVivitarが一眼レフを出しています。Kマウントのマニュアルフォーカス専用機です。どう見てもどこかのOEMだと思います。値段はレンズ付きで$150位、新品のカメラにしては異様に安い値段です。きっとまた何か不具合があるに決まっています。でもなぜか気になるのです。「そんなもの買っても後悔するだけだ」と自分に言い聞かせています。でも、安い値段がハートをバイブレートしそうなんです。今のところ、このカメラを売っているところを見たことがないので、何とか自制心を保っています。

 もし、あなたが中古カメラ屋さんに行って、ジャンクかごか何かにVivitorの製品があったらぜひ手に入れて見てください。致命的な不具合はないでしょうが、「かゆいと頃に手が届いていない」、そんな気持ちを味わうこと請け合いです。さあ、私の仲間になりましょう。




戻る(検索エンジン等でご来場のかた用です。左にメニューがでている方はそちらをご利用ください)