合コンのお話

 大学生の頃の話である。私の大学は世にも珍しい男子大学であった。しかも全寮制。更に平日は外出が出来ないシステムになっていた。どこの大学かバレバレであるが、この件は今回の主題からはずれるので、詳しくは後日に譲りたい。さて、そのような環境にあっても10代後半から20代前半の男子というものは、女の子を求める物である。女の子みたいな物ではなくて、女の子である。このあたりは主題からはずれるが、誤解を避けるためにあえて強く申し上げる。上記のような環境にあっても、代用品や男の子に奔る者はいなかった。これは本当である。ここだけは本当に信じていただきたい(私が知らなかっただけかもしれないが)。そしてそのぶん外の女の子との縁を大事にしたのだった。つまり、合コンである。誰かに彼女が出来れば当然合コンであった。そうやって持ちつ持たれつの関係が出来上がっていた。原始共産主義の始まりはこんな感じだったのかもしれない。
 さて、我々は週末の合コンにある意味、命を懸けていた。想像していただきたい。月曜日から土曜日の午前中まで、見るのは基本的に男だけである。金曜日の午後辺りになると掃除のおばちゃんさえ美人に見えてくる。「いけない、これではいけない。」我々にとって、合コンは水や空気と一緒、すなわち生きて行くために不可欠な物だったのである。
 私の大学は神奈川県にあった。合コンの相手は当然近隣の女子大か看護学校、専門学校辺りになる。我々が「是非合コンをしていただきたい」と常々願っていた大学がある。フェリス女学院である。名前からして、お嬢さん学校と言う感じで、我々は清楚でハイソな女子大をイメージしていた。幸い私はフェリス女学院との合コンには参加したことがない。縁がなかったのである。おかげでいまだにフェリス女学院に対しては当時と変わらないクリーンイメージを持っている。そのフェリスの女の子の口から出たお言葉として我々に伝わってきたせりふがある。「結婚するなら慶大生、彼氏にするなら早大生、荷物持ちなら○大生」。この○大生が我々である。ますますどこの大学がバレバレであろう。

 さて合コンの時、幹事役の女の子より可愛い子が来ることは絶対にないのは有名な話である。また、幹事の女の子に「今度の合コンどんな子が来るの?」と聞いて「うん、性格のいい子だよ」と言う返事が来たときは、たいていハズレである。「可愛い子だよ」でもまだ安心できない。その可愛いが容姿ではなく「性格が可愛い」である可能性もあるのだ。また、「美人」よりも「可愛い」の方が主観のはいる要素が大きいのでこれも注意が必要である。ただ、何にせよ「掃除のおばちゃんが美人に見える」状態の我々、もう女の子が来るだけで「何の文句もございません。」
 余談であるが、私は合コンでは比較的評判のいい人であった。酒は弱い、しかし弱いと言うことは1次会の冒頭からエンジンがかかって(メートルが上がって)場を盛り上げるにはもってこいのキャラである。そしてたいてい沈没する。女の子に言わせると「BISONさんっておもしろかったね、でも、わたしは...」と言う悲しいキャラだったのである。こうしてみると私には合コンで、もしくは合コン後おいしい思いをしたという話は全くない。そしてこのキャラはいまだに捨て切れていない。
 合コンを何回もこなしているうちに、ふと気づいた事実がある。これは男側の話である。合コンが終わったあと、「どの子が良かったか」と言う話になるのは当然であるが、ここでよく分析してみると、きわめておもしろいことがわかる。この子が一番!と言う子はたいてい一人である。つまり、一番かわいい子に対する男の子の意見はほぼ一致する。しかし、これが2番目、3番目となると思いっきり好みが出るのである。つまり、美人はやはり不滅、しかしその次は好みによってバラバラなのである。さらにおもしろいことに、合コン後しばらくたって「あの時の合コンの子とつきあっちゃたよ」と言うときの相手はたいてい2番目の女の子である。1番目の子は敬遠されることが非常に多いのである。もちろん我々にとってもノープロブレムな結果である。しかし世の中良くできている。そうしてみると、世の中すごい美人が独身だったり、彼氏がいないと言う話も説明が付く。美人は不滅、しかし必ずしも幸せとは限らなかったりするわけである。

 さて、ここまでの経験と研究を元にして、考察を加えていきたい。各メーカーのフラッグシップというのは、ここで言う1番目の子である(えっ、いきなりカメラの話題?)。つまり、ニコンF3やキヤノンF−1、ペンタックスLX等を出された場合、これを否定することは難しい。屁理屈をつけることは可能であるが、それは「俺って美人は嫌いなんだよね」と言うたぐいの屁理屈に聞こえてしまう。しかし、2番目の子、つまり中級機選びとなるとこれは本当に個人の好みのぶつかり合いになる。今のカメラはわからないが1980年当時、各メーカーの中級機はどれも個性的だった。Aシリーズ世代なら、ペンタックスMEスーパー、オリンパスOM−2、キヤノンA−1、ミノルタXD、ニコンFE辺りになるだろう。これは選び甲斐がある。そしてこの中から選び出した機種が、その人の本当の好みになるのだろう。合コンの相手がニコンF3、キヤノンA−1、ミノルタXD、ペンタックススーパーA、リコーXR−2sだったとして、「誰が一番良い?」と聞かれたら、やはり風格で「ニコンF3」と言ってしまいそうである。しかし、自分の物にするならやっぱり私の場合はA−1である。これはとりもなおさず私の好みがA−1なのである。

 ということで、自分の好みはいわゆる中級機を見ればわかると言うお話でした。ちょっと強引でしたね。






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