ジャンク市の惨状

 ジャンク市の惨状についてはもう皆さんご存知の話で、あえて書くまでもない話かもしれないとは思います。しかも私は約2年間も日本を離れており、現在のジャンク市がどのような状況になっているか正確にはつかんでおりません。私がいわゆるジャンク市に行ったのは1999年夏ごろが最後ですから、その頃とはずいぶん状況も変わったことでしょう。しかし、いろいろなホームページの掲示板を見ていると、状況は改善されたと言うより悪化の一途をたどっているように感じます。なにが?って、あのジャンク市に現れる、独占企業体のことです。

 別に趣味で行っているジャンク市ですし、他人の振る舞いについて堅いことを言うつもりはありません。ジャンク市がにぎわうことは、中古カメラの人気が高い証拠であり、これ自体はめでたいことです。しかし、もうちょっと何とかしてもいいのではないでしょうか?

 ここまで読んで何のことかわからない方は、大きなジャンク市に行かれたことがない方だと思います。ジャンク市というのはカメラ屋さんが時々手持ちのジャンクカメラを処分するために開催するイベントです。中古市のイベントの一つとして行われることもありますし、店によっては月例で行っているところもあります。一眼レフのジャンクでも大体3000円くらいで手に入りますので、修理を趣味にする人にとってはなかなか魅力的です。中には少し手を入れるだけで正常に動く物もありますので、覗いてみる価値はあります。この「独占企業体」はジャンク市での話で、ジャンク市に興味のない方は特に知る必要もないのですが、それでは文章が続きませんので、私の実体験を添えて2年前の状況をご紹介いたします。

 その日私は日本橋で月例で行われているジャンク市に参加するため、始発電車で家を出ました。カメラ屋さんの開店は8時です。仕事は9時からでしたから、30分ほどは見て回れることでしょう。私は7時10分ごろに店の前に付き、新聞を読みながら開店を待ちました。私の前に並んでいるのは一人だけ、なかなかいい位置をキープしています。時間が経つにつれだんだん人が集まってきました。開店30分前になると、10人以上が並んでいました。ところがどうも妙なのですが、列の前の方に並んでいる人たち、私以外はどうやら顔見知りのようなのです。横浜で行われたジャンク市の話で盛り上がっています。
 開店時間には20人以上の人が並んでいたことでしょう。シャッターが開き、店内になだれ込みました。私はほぼベストポジションだったのでジャンク籠に取り付き、2台のジャンクカメラを手にしてその場をいったん離れました。離れてみてびっくりしたのですが、先ほどの仲間連中が籠の周りをブロックして、お仲間以外は籠に近づけないようになっているのです。そのうち、籠に取り付いていた人たちが両手いっぱい(本当に両手いっぱい)に一眼レフを抱えて籠から離れました。後には1台の一眼レフもなく、まさに「ぺんぺん草も生えん」というような状況でした。当然ほかのお客さんから不満が出ましたが何せ人数がいますから怖い物はありません。
 そうして取ったジャンクをみんなで交換し合うのです。電池をいれて動作を確認し、誰もいらないことになって物だけがジャンク籠に戻されます。見事なチームワークですが、しかし、これはなんと言ったらいいのでしょうか?

 彼らのやっていることはたぶん法律は犯していませんし、罰せられるようなことではありません。似たようなことはどこに行っても良くあります。お店にしても大切な常連ですから排除するようなことはしないでしょう。しかし、この行為に対しひとつだけ言えることがあります。

「大人げない」

もし子供がこのような行為をしていたら、大人は注意しなければなりません。「君たち、自分だけがよければそれでいいの?欲しい物だけを取って、そうでないものは、並んでいる人たちのために残しておいてあげなさい」というのがたぶん正しい大人の対応でしょう。でも、これをやっているのは小学生ではなく、いい年をした大人なのです。しかもあいてはジャンクカメラ。見なければいいもの見てしまったようないやな気分になって、カメラ屋さんを後にしました。それが2年前の出来事です。

断片的に伝わってくる最近の状況を総合すると、私が見たのと同じ組織かどうかわかりませんが、ますます強大になり組織化され行動は大胆になり、ジャンク市で手に入れたカメラはネットオークションで売られているのだそうです。完全にビジネスになっていますね。でもこれでも決して法律に違反しているわけではありません。

心ある人たちのなかには、この惨状に辟易しジャンク市から足を洗った人もいるそうです。まあ、見ていて気持ちのいいものではありませんし、ほかのお客さんの中に血気盛んな人がいれば容易に喧嘩に発展して、ますます見苦しい状況になります。

さて、私ですがジャンク市から足を洗ったわけではなく、たまたま仕事が忙しくなってジャンク市に参加できなくなりそのままアメリカに渡ったのでした。私は人間が出来ていませんし、子供ですのでおとなしく足を洗おうとは思っていません。もし参加するなら意地になって連中より早く店に行って、カメラを手に入れるでしょう。でも、できることならこっちも人数を集めて同じことを仕返してやりたいと言う、ものすごく子供じみた誘惑にかられます。もちろんそんなことをすれば、次回は向こうがもっと早く来るだけで、最終的には徹夜しなければならなくなってしまいます。「それはちょっといやだなあ」

「ジャンクはみんなの財産」なんて馬鹿なことは言いません。欲しければ早く行けばいいだけのことです。しかしそれでも、それにしても、もう少し他人に不快感を与えないようには出来ないものなのでしょうかね。






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