ネガ?ポジ?

 最近私は生意気にもリバーサルを少しだけ使うようになったですが、基本的にファミリーカメラマンですのでにネガカラー派です。ところで、趣味で写真を撮る人にとって、ネガかポジかは結構重要な問題です。プロはもっぱらポジでしょう。でもこれは、色がいいとか、レンズのクセが如実にでておもしろいから、と言うような理由ではなく(少しはあるかもしれませんが)印刷する上でポジの方が都合がいいからだそうです。その証拠にプロの間でもデジタルが急速に浸透していると言う話を聞いたことがあります。プロはそれで飯を食っているわけですから失敗は許されませんし、少しでも便利な物はどんどん取り入れます。いくらキヤノンF−1が良いカメラだと言っても、現在報道関係のプロが仕事でバリバリ使っているわけではありません。いずれこの分野は完全にデジタルになってゆくんでしょうね。

 さて、ご承知のとおり、私のホームページにはレンズの評価はほとんどありません。最も大きな理由は私がネガカラー派だからです。私はネガで撮影する分には、レンズの発色とかコントラストはことさら気にする必要はないと思っていますし、ネガで得られた結果を元に厳密なレンズの善し悪しを判断することはできないと思っています。同じラボだって注文する日によって色が全然違うことがあるのは有名な話ですし、コントラストも然りです。昔読んだ「カメラ経済学」と言う本に書いてありましたが、たいていのラボはオートでフィルターを選んで色補正しているのだそうです。プリンタ機械で写真全体の色の傾向を測定して平均的になるようにフィルターを選んでいるのだそうです。ですから青っぽい写真は青みを押さえる傾向の、赤っぽい写真は赤みを押さえる方向のフィルターが使われます。そうなると夕日の写真や青い海・青い空の写真はそれぞれの色が抑えられる方向に補正され、「思ったような色がでない」と言うことになります。もちろんこの話は20年以上前の話ですから、現在は色々改善されているとは思います。しかし、基本的な問題はたぶん変わっていません。やはりネガカラーで撮影された写真を見て、レンズの性能を語るのはあまり意味がないような気がします。もちろんボケ方やピントの合い方は十分議論できると思いますが。
 ネガからフィルムスキャナーで読み込む場合でも同じでしょう。フィルムスキャナーを買う前、私はフィルムスキャナーを使えば、ネガでももほとんど補正しないできれいな写真がスキャンできるものだと思っていました。実際に買って愕然としました。コントラストが低すぎてどうにも使えない画像しかスキャンできないのです。確かに私のスキャナーは安物です。しかし、どんなに高いフィルムスキャナーを使っても、ネガからの場合は相応の補正が必要でしょう。そもそも、フジのネガとコダックのネガでは、スキャン結果が全く異なります。フジにはフジ用の、コダックにはコダック用の設定があるわけで、この時点で既にドライバー上で補正がなされているわけです。ですから、ネガを使っている限りはFDレンズの優れたカラーバランスを議論することは出来ないのではないかというのが私の意見です。
 もっとも、ネガカラーを使っていても発色の違いを感じることはあります。実際に私も発色やコントラストの違いに驚いたことがあります。この場合はたいてい酷くて愕然とする方が多いのですが、広い世界中のレンズを使っていると、「申し訳ない、君をカラーフィルムで使おうとした私が悪かった」と思わずレンズに謝ってしまうようなと場面に時々出くわします。日本にいて日本製のレンズを使っていた頃はそんなに酷いことはなかったのですが、まさに世の中広いなぁと言う感じです。
 世界の大海原にこぎ出すためにはリスクは覚悟しなければなりません。最近コンピューターウィルスが世界を席巻していますが、NECの98シリーズだけを使っていればコンピューターウィルスの心配はいりません。世界仕様のマシンは値段も安く魅力的ですが、それなりのリスクは覚悟しなければなりません。と言うような話は5年前に良く聞かされました。

 ところで、世界仕様と言えば家庭用のビデオの世界でVHSが世界仕様であることは疑問の余地のないところでしょう。それはもうM42とかライカLマウントの比ではありません。VHSの対抗馬は何か??もう忘れてしまいましたか?ベータです。ソニーのベータが家庭用のビデオから姿を消してずいぶんたちます。ちなみに私の実家は1990年までベータでした。ベータがVHSに負けた理由は色々ありますが、ビデオ1本が高価だった時代に8時間録画が出来たVHSはそれだけで優位でした。今にして思えば8時間録画なんて大したことではないのですが、ビデオテープ1本が3000円した時代には、十分魅力的でした。当然画質は落ちますが、とりあえずナイターを録画して後から見る分には高画質である必要はありません。当時のソニーに画質を落としてでも12時間録画を可能にする勇気があれば(と言うか妥協)、あるいは現在のビデオは違った物になっていたかもしれません。あとはいわゆるレンタルビデオ屋さんの登場ですね。テレビ番組を録画して見るだけならベータでもVHSでも関係ありませんが、レンタルビデオ屋さんから借りてきてみるとなるとやはり「寄らば大樹の陰」にならざるを得ません。
 と、ここまでは別に珍しくも何ともないストーリーなのですが、3年ほど前、私はある経済学の先生に驚くべき事実を知らされたのでした。ソニー曰く
「ベータでは儲けさせていただきました」
 ソニーの負け惜しみだろうと思ったのですが、実はそうでもないのです。ソニーはベータシリーズの末期にEDベータと言うものすごく高画質のシリーズを出しました。民生用としてはオーバースペックだったようですが、最後は画質の良さがベータの取り柄だったのでその技術力を尽くして最高画質を極めたのです。しかし結局EDはVHSの牙城を崩すことが出来ず、家庭用のビデオからは消えて行きました。しかしその圧倒的な高画質は放送局の業務用機材として生き残ったのだそうです。民生用のビデオデッキやテープは多くの会社が参入してしのぎを削っています。VHSの開発元であってもうかうかしてはいられません。ある時期から東南アジアの会社も安い製品を作るようになり厳しいコスト管理を強いられ、なかなか儲けのでない製品になりました。しかし、ベータはソニー1社です。テープは消耗品ですから必ず売れますし、別に量販店で値引きする必要もありません。デッキもそうです。競合する会社がいませんからまさに独占状態です。「そりゃ、おいしいわ」と言う状況だったのだそうです。多分今はデジタルでしょうから本当にベータは消え去ったのではないかと思いますが、これは意外な事実でした。ソニー恐るべしです。

 さて、話をフィルムに戻しますが、プロがポジを使うのは理解できます。その方が便利だからです。しかし印刷用の写真を撮るわけではないアマチュアでも、少なくない数の人がポジを使っています。こういう方たちはどうやって写真を楽しむのでしょう。ポジはかつては主にスライド用のフィルムでした。スライドは部屋を暗くしてスライド映写機で楽しみました。しかし、ポジを使っている方々がみんな夜部屋を暗くしてスライド映写機を使って楽しんでいるとは思えません。ダイレクトプリントと言う手もありますがこれは高価ですから「最後の手段」と言う気がします。となると、そもそも「プリントしたり、みんなで見て楽しむ」と言う考え方自体が間違いなのかもしれません。あくまで作品ですから、大量にプリントする必要はありません。「これっ!」と言う1枚だけをダイレクトプリントして個展の備える、と言うのが正しいハイアマチュアの姿勢なのかもしれません。ポジは確かにネガより色がきれいですし、ネガからのプリントという不確定要素を排除できる魅力があります。そこまでになって初めて使う価値のあるフィルムなのかもしれません。
  ところで、最初に書きましたが最近私はポジを少しずつ使っています。家族の写真は相変わらずネガですが、風景やスナップを撮影するときはポジを使うことがあります。理由はフィルムスキャナーです。私の安物スキャナーではネガよりポジの方が取り込みが楽です。ネガの場合はどうしてもオーバー補正になって、不自然にコントラストの強い写真を作ってしまいがちです。それに、フィルムスキャナーを使うことを前提にした場合は、プリントするよりポジを使った方が安くすみます。ですから、プリントにする必要がない場合に限り、ポジを使っているのです。

 と言うわけで、ポジを主用されている方はどのようにして、写真を楽しんでいらっしゃるのでしょうか?特にフィルムスキャナーがなかった時代はどうされていたのでしょう。






戻る(検索エンジン等でご来場のかた用です。左にメニューがでている方はそちらをご利用ください)