アメリカネット事情

 アメリカでは、普段の生活とネットが切り離せません。もちろんネットなしでも生活は出来るのですが、ネットがあるとないとでは便利さが全然違います。銀行の振り込みや口座管理は当然ネット経由で行います。そもそもクレジットカードや小切手が普及していた社会で、基本的に現金を持ち歩くことが少なかった人たちですから、ネット決済はあっという間に普及したようです。旅行に行く場合も、まずネットで調べてホテルを予約します。日本なら旅行代理店の出番ですが、安く旅行するためには自分でネットを利用して調べて飛行機とホテルをとるのが一番です。このようにアメリカでは、ネットが生活の一部になっています。

 日本でもここ2年ほどの間にネットが急激に広まったようです。多くのホームページがここ2年以内に開設されています(うちもそうですが)。やっと日本もネットが普及してきたようです。銀行も徐々にネットを利用したサービスを開始したようですね、郵便局はまだですが。インターネットを利用した情報も徐々に発展しつつあるようです。
 しかし、この分野ではアメリカの方がはるかに先進国です。例えば何か調べ物をしようと思ったとき、日本語のサイトがどれだけ役に立つでしょう?実は、私は仕事関係の調べ物で良く日本語のサーチエンジンを利用するのですが、あまりツボにヒットするサイトには出会えません。どちらかに極端に偏った意見か、情報のさわりだけ出して「あとは本を買って読んでね」と言うたぐいのコマーシャルサイトが多いのです。とくに、個人経営でない、学術機関や政府関係組織、地方公共団体のホームページの力量不足がめだちます。パソコンの普及はめざましいものがあるはずなのですが、日本ではホームページというものはいまだ極端な意見の開陳の場か、商売の場なのかもしれません。

 アメリカなら英語を読むのさえ我慢すれば、いろいろな情報がネット経由で入ってきます。まずネットで検索して、それから行動するのがもっとも頭のいい方法です。大学生に宿題を出しても、多くの者がまずインターネットから情報を集めてきます。
 日本のネット人口もここ数年爆発的に伸び、アメリカに近づいています。なにやら私の母(68)も、海を越えて私にメールを送って来ていますから大したものです。ただ、多くの人がアメリカ人並にインターネットに親しんでいるかというと私は疑問に思います。
 何が問題なのでしょう?その原因はとりあえずNTTの料金体系にある、と言うのが私の意見です。私のネット環境はいまだアナログ回線のダイアルアップです。運が良ければ45000bpsくらいはでます。それでも特に不満はありません。
 おそらく一般のユーザーがまず最初に使うのがNTTを利用してのダイアルアップ接続でしょう。これが一番手軽です。ただ、この方法の問題点は速度があまりでない点と従量制の料金です。ちょっとネットサーフィンでもやろうものなら、あっという間に月間50〜60時間近くは繋いでしまいます。これだって一日2時間の計算です。最近のプロバイダは料金固定が一般的ですが、NTTは相変わらず市内通話でさえ従量制です。もちろん、ケーブルテレビやADSLも普及し始めていますから、少しずつ状況は変わりつつあるのでしょう。しかし、パソコンを始めたばかりの一般ユーザーにとってダイヤルアップ接続からそれらの新しい接続方式に切り替えるのは容易ではありませんし、どの方法を採っても初期投資がかかります。それではダイヤルアップで十分かと言うと、日本ではそうではありません。ブロードバンドに切り替えない限り、時間に追われるようにしてしかネットを楽しめないのです。
 私が日本にいた1999年はニフティでさえ、従量制が一般的でしたから(時間無制限はすごく高かったのです)プロバイダとNTTの両方に追われながらのネット利用でした。ページを読み込んだら一回接続を切ってゆっくり読んでからまた繋げる、と言うようなことをまじめにやっていました。パソコンを始めたばかりのユーザーがこの環境でインターネットの便利さがわかるとは思えません。便利さがわからなければ、ASDLにも進まないでしょう。

 アメリカでは市内通話は基本料金に含まれています。もちろん従量制の料金体系も選べますが、ほとんどのユーザーは月額$20前後で市内通話かけ放題の環境を手に入れることができます。おそらくこの環境がアメリカのネット人口を支えているのだと思います。通信速度については、もちろん早いに越したことはありませんが56kのモデムがあれば、どうしようもない不便は感じません。ネットを始めたばかりのユーザーもこの環境でゆっくりネットサーフィンを楽しみ、ネットに親しんで行くのです。これは想像や作り話ではありません。たとえば、うちの家内は日本にいた頃はネットに全く興味も理解もなく、アメリカに行く直前に「持っていないと不便かもしれない」と言う理由でAOLのアカウントをとりましたが、メール以外は一切利用していませんでした。しかし、アメリカに来て繋ぎ放題の環境になると少しずつネットを見るようになり、ある日e-bayを知るとあとは坂道を転がるように(表現不適切)インターネットにはまって行きました。今では自前でホームページまで開いて、自分でちゃんと管理しています。ここに至るまで約1年でした。環境さえ整えば、1年でネットワーカーが出来上がります。

 ADSLは好評みたいですね。私の友人達もどんどん乗り換えているようです。しかし、やはりビギナーにとって一番いいのは、「料金固定の市内通話」ではないでしょうか。逆に言えば日本でADSLのニーズが高いのは、市内通話が料金固定ではないからだと思います。

 日本は電子立国だ、技術立国だ、と声高におっしゃる方もおいでですが、情報分野における日本の立ち後れは目を覆うほどの状況だと思います。NTTが今の料金体系を続ける限り、インターネットの裾野は広がらないでしょう。多少初期投資はかかっても早い回線を求めるようなある程度経験のあるユーザーには快適な環境が提供されつつありますが、ビギナーも含めてみんなが安心してネットを利用できる環境にはまだ到達していないと思います。そして、ネット社会というのは多くの人が利用しなければ発達しません。みんなが利用するから企業は投資してでもネットサービスを充実させるのです。
 アメリカでは速達や書留、宅配便がネット上で追跡できます。みんなが利用するからこのようなサービスが可能になるのです。

 NTTはその辺りの事情をどこまで理解しているのでしょうか。






戻る(検索エンジン等でご来場のかた用です。左にメニューがでている方はそちらをご利用ください)