アメリカのおもしろくないオリンピック

 いつの間にかオリンピックが終わっていた。オリンピックが終わってもう2週間も経つ。私が住んでいるコロラドスプリングスはソルトレイクシティまで車で12時間程度の距離である。長野の時もそうだったが仕事がある以上、近いからと言って見に行くわけには行かない。しかし長野の時はおもしろかった。感動もした。しかし、今回のソルトレイクシティはどうしたことだろう。楽しみにしていたのに、ほとんど盛り上がることなく終わってしまった。まあ、フィギュアスケートペアと男子ショートトラックは別の意味で面白かったが。

 アメリカで見るオリンピックが面白くない最大の原因は、なんと言っても日本人の活躍する競技が放送されないことである。これはシドニーの時もそうだった。私は柔ちゃんの感動の優勝を見ていない。だって放送してくれないんだもの。たっぷり見ることが出来たのは、野球と女子ソフトボールくらいだった。今回ソルトレイクシティも結局は同じだった。私は上村愛子の決勝での滑りは見ていない。さすがに里谷多恵は長野オリンピック金メダリストだし今回もメダルを取ったので放送したが、頼むから15位のアメリカの選手じゃなくて5位の上村を放送してくれ。

 しかし、それだけではない。アメリカのテレビ放送自体が抱える問題もある。その日私は晩ご飯を食べ終えてから、女子モーグル決勝を見ていた。新聞のテレビ欄で時間を確認して絶対見逃さない態勢を取っていた。新聞にはLIVE(中継)と書いてある。上村4位、里谷6位で決勝が始まっていた。外はもう暗い。ソルトレイクシティはまだ明るいようだ。さすがアメリカ、本土だけでもタイムゾーンが4つもあるからな。えーとソルトレイクシティとの時差は...そんなものあるわけないじゃないか!コロラドもユタも山地時間だから時差はゼロだ。あっれー??
 インターネットで朝日新聞のサイトを見てみると、「里谷銅メダル!!!」。LIVEというのは嘘で実は録画だったのである。もちろん放送時間内にライブのシーンもある。同じ日に行われていたフィギュアスケートのペアは生中継だった。つまりその時間帯に一つでも中継のものがあれば堂々とLIVEと書くのである。日本ならJAROに訴えているところだ。こうしてみると、なぜかアメリカでは録画のシーンが多い。時差が16時間ある日本ならともかく、どうして現地でやっているくせに録画にしなければならないのか?ジャンプもそうだった。はじめから日本が負けるとわかっている競技を見るほど暇ではない。と言うわけで私は初日でしらけてしまってあとはスピードスケートと女子フィギュアスケートしか見なかったのである。

 アメリカではオリンピックはNBCの独占放送だった。それはそれでかまわない。しかしオリンピックなんだから昼間だって通常番組を変更してでも中継をやればいいのに、昼間はほとんど放送がなかった。あるのは夜のゴールデンタイムだけ。だから結局生中継できるのは夜競技が行われているフィギュアスケートだけになってしまうのである。深夜に生中継している日本はエライ。爪の垢をせんじて飲ませてやりたい。

 どうしてアメリカ人はオリンピックで盛り上がろうとしないのか?決してスポーツが嫌いなわけではなさそうだ。フットボールの時期になれば、毎週毎週その話題で持ちきりになる。私はフットボールはそれほど興味がないので話題についてゆけなくなるくらいだ。フットボール上に行けば、入り口付近でみんなで集まってパーティをやって、盛り上がってから競技場に入る。フットボールほどではないが、野球だってバスケットだって大人気である。
 元千葉ロッテマリーンズの小林至氏はコラムで「アメリカ人は自分の国が発祥でないスポーツには興味を持たない」と評論していた。これは確かに当たっているかもしれない。確かに開会式は盛り上がった。私は行かなかったがオフィスの同僚は、みんなを集めてパーティをしながら、テレビで開会式を見ていた。でも、それっきりである。自分の国が必ず一番になれるものしか興味がないのだろうか。

 サッカーのワールドカップが近づいている。インターネットを見ているとその熱気が伝わってくる。しかし、アメリカでは絶対1試合も放送されないと思う。少なくとも決勝で日本とアメリカがぶつからない限りは、日本の勇姿を見ることはないであろう。
 例の、スピードスケートショートトラックのあと、韓国ではワールドカップ予選で当たるアメリカに「なんとしても勝って目にものを見せる」と言うことで盛り上がったらしい。韓国にはぜひがんばって欲しい。何であれこの人たちの鼻をへし折るのは良いことだ。しかし、韓国が10−0で勝ったとしても、きっとアメリカではテレビで放映すらされないだろうし、誰の知らずに終わってしまうのだと思う。