無論タムロン その2

 前回は実はタムロンレンズの話をしようと思って、レンズ専門メーカー全般の話になってしまった。計画性のない「雑談」は年が改まっても変わらない。

 さて、昨年末、私はタムロン製のレンズを買った。偶然N氏と一緒になり、N氏の目の前で購入することになった。「買い物のプロ」N氏の前で買うのは緊張したが、すぐにオフィスに戻らなければならない事情があったので躊躇している暇はなかった。
 私が購入したのは、タムロン28−200mmF3.8−5.6である。新品だが、このレンズはすでに生産を終了している。いわゆる流通在庫、悪くいえば売れ残り品である。実はアメリカにいた頃から、私はこのスペックのレンズに興味を持っていた。この焦点距離をカバーすれば、交換レンズを持ち歩く必要はほとんどない。こういうレンズは概して設計上の無理があり、惨憺たる写りになるものであったが、シャッターバグを見る限りは最近のこの手のレンズの評判は決して悪くない。当初、私はトキナーの28−200を買うつもりだった。こいつはたしかまだ現行品のはずである。しかし、帰国後の多忙で実際の購入については延び延びになっていた。そうこうしているうちに、このタムロンを発見したのである。私は自慢ではないが、キヤノン以外もあらゆるメーカーのカメラを保有している。高いレンズは多くのカメラで使えた方がいいに決まっている(高いと行ってもこのレンズは3万円台なのだが)。タムロンのアダプトール2マウントならすでにいくつか持っており、タムロンのレンズなら買ってすぐにでも使いまわりがきく。そういった事情が絡み合って、衝動買いと言っても良いようなタイミングで、28−200を買ってしまった。

 このレンズは元々はオートフォーカス用として開発されたレンズである。同じスペックのオートフォーカス用は現行品である。さすがのタムロンもマニュアルフォーカス用に新しいレンズを一から作る余力はないのだろう。私としては別にもとがオートフォーカス用でもかまわない。しかし、実際に使ってみてちょっと使いにくい点もあったので報告したい。元々オートフォーカス用なので、ピントリングの幅がものすごく狭いのである。ファーカスリングは太いのにである。とくに、広角側にしたときはピントリングをつまんで回すような感じになり、あまり使い勝手は良くない。望遠側にすれば全体が長くなるので、それほど気にならないのだが。
 さらに、オートフォーカス用なのでヘリコイドの回転がマニュアルフォーカス用のレンズに比べて少ない。最短距離から無限遠までがすぐである。広角ならこれでも問題ないのだが、200mmで精密にピントを合わせようとするとかなり苦しい。オートフォーカスなら問題ないのであろうが、マニュアルでこれをやるのは容易ではない。

 とは言いながら、結構このレンズは気に入った。28−200mmとなると、感覚的にはビデオカメラのレンズ並である。最新式の超大ズーム比のレンズが一昔前のマニュアルフォーカスカメラで使えるのだから贅沢を言ってはいけない。これだけのズーム比があれば日中戸外であれば、ほぼオールマイティーである。ものぐさものがますますものぐさになるかもしれないが、便利なものは便利である。

 このレンズ、200mmまでカバーしている割にはコンパクトだ、と思って買った。フィルター径は72mmで筐体自体は結構太いのだが、28mmの状態では長さ的にはコンパクトになる。しかし、写真を見てわかるとおりこのレンズ、うらやましいほどの膨張率を誇っている。200mmの状態では立派な望遠レンズのサイズになっているのだ。これだけの膨張率を達成するためズームリングがちょっと重いが、まあ気になるほどでもないと思う。まさに、「男のレンズ」、ビッグな存在である。

 前回も申し上げたとおり、タムロンはマニュアルフォーカスから完全に撤退した。アダプトールのマウントも間もなく手に入りにくくなる。こういう事情が重なると、まだ在庫があるうちに、タムロンのレンズを揃えてみたくなってしまう。それにしても、タムロンがマニュアルフォーカスから撤退するのは重ね重ね残念である。