この日もやはりSOHOに行くことになり、地下鉄で移動です。あの評判の悪い、昼間でも危ないというニューヨークの地下鉄に、こともあろうに家内と子供2人をつれて乗ることになってしまったのです。一人ならいくらでも危険を回避できるでしょうが、この弱小部隊を抱えてはいかなる戦闘も避けなければなりません。私はゆえあって、飛び道具なら下は38口径から上は20mm機関砲まで扱った経験があるのですが、そんな経験はこの場合全く役に立ちません(扱ったと言ってもいろいろなレベルがあります)。なるべくドアの近くに座って、背中を見せないようにして(Byゴルゴ13)注意深く当たりを見渡しながら移動しました。地下鉄が発車すると同時にいかにも怪しい黒人のカップルが車両の真ん中に進みました。「いかん、ここで何か起きたら対処のしようがない」、そう思って神にも祈る思いで彼等を見守りました。すると彼等は何を思ったのか突然歌を歌い出し、宗教の話を始めました。唖然としてみているうちに懐から布袋をとりだし、車内で寄付を募り始めました。「何なんだいったい?この人たちは」彼等が本当の宗教関係者だったのか、新手の寄付集めなのかはわかりませんでしたが、彼等の作戦は失敗でした。彼等が集めたものは、食べかけのM&Msだけ。帰りの地下鉄にも同じような寄付集めがいましたので案外ポピューラーな手なんかも知れません。ちなみに地下鉄の中ではカメラを構える勇気は私にはありませんでした。

<前へ  次へ>